会社吸収合併を受けて50代からの転職。待ち受けていたのは、年齢の壁|私の転職体験談
転職前
- 職業
- 建築業
- 職種
- 人事労務
- 従業員規模
- 100名
- 年収
- 700万円
転職後
- 職業
- 非鉄金属製造業
- 職種
- 人事労務
- 従業員規模
- 50名
- 年収
- 500万円
目次
いちご555さんの転職ストーリー
1これまでの私
仕事を通じて、誰かと繋がることが至上の喜び。

県内の建設会社で、業務課長をしていました。
私の仕事は、従業員の募集・採用・教育、福利厚生、資材購入、製造、安全衛生などと幅広く、いわば「技術以外の業務」の全般を請け負っていました。
私の性格…ですか?
そうですね、「人と接すること」はとても好きですね。
仕事も人に関することが中心でしたから、いろんな人と会話する中で、 その方のいいところを自分なりに取り込むことをモットーとしていました。
仕事の一番の楽しさは、面接して採用した人物が、入社後にめきめきと成長して頭角を現し、組織を担う人材に育っていくのを見ることでした。
私にとって、それは大きな生きがいであり、仕事のやりがいでもありました
家族は、妻と子どもが2人の4人家族。
子どもはどちらも高校生で、学業や部活、さらにはスマホ代など、とてもお金のかかる時期でして笑。
たまに将来の資産立てに頭を悩ませることもありますが、まあなんとかやっていけるだろう。──そう思っていました。
2転職のきっかけ
吸収合併により、描いていたビジョンは消え去り。

私が転職したのは、52才のときでした。
48才のときに、勤めていた会社(建設会社)が吸収合併されたため、当然ながら私の部署も役職もなくなることが決定しました。
さらに拍車をかけたのは、合併先の次長(私の上司)が私より年下であったことです。
もちろん実力主義の昨今、上司が年下であることは珍しいことではありません。
しかし、会社合併とは、異文化が合併することでもあります。
今まで親しんできた社風と、合併先の社風は当然ながら違いました。
そして、新しい次長とは、性格的にもまったく合わなかったのです。
次長はいわば、「クールにドライに物事を進めていく」タイプでした。
ことあるごとに、私の仕事の進め方に対して「要領が悪い」 「もっと合理的に進めて欲しい」と、婉曲的な表現で訴えかけてきました。
もちろん、彼の言い分にも一理あります。
ですが、ただでさえ今までやりがいに感じていた業務を奪われ、更には自分のこれまで大切にしてきた働き方まで干渉されるのは、なかなかに堪えがたいことでした。
そして、
- 私
-
「このまま働き続けることが、自分にとってどれだけの幸せになるのだろうか。──転職するなら、これが最後のチャンスかもしれない」
と思い立ったのです。
あわせて読みたい
-
- あなたの会社が吸収合併(M&A)されたとき、どうする?留まるか転職かの判断軸
- M&Aを受けて「留まるべきか、転職すべきか」を悩んでいる人も多いでしょう。勤務先が他社に合併・買収されることになったとき、勤務を続けるべきか転職するべきかを決める際の判断軸について解説します。...
3転職活動中
50代という「壁」。

転職を決断し、真っ先に妻に相談しました。
妻は2つの条件付きで同意してくれました。
その条件とは、以下の2つです。
- 年収がさほど変わらないこと
- 就職先を決めてから現在の会社を退社すること
子ども2人をかかえる主婦としては、当然の意見だと思います。
それを絶対条件として私は転職活動を始めました。
まずはハローワークの求人を見て応募を始めました。
職種は、今までの仕事に似た「人事、労務」関係の仕事です。
あわせて読みたい
-
- ミドル・シニア層の「人事」への需要は?40代・50代が転職で人事部を目指す際のポイント・注意点
- 現在の年齢で新たなキャリアに挑戦できるのか、人事業務の経験者として需要があるのか、不安に感じる人もいるはずです。そこで、今回は40〜50代の人事経験者が転職する際のポイントについて解説していきます。...
しかし、中高年の再就職は現実的には非常に厳しいものでした。
年齢制限はなくとも、履歴書を送った時点で「不採用」とされることもありました。
実際に面接までこぎつけても、会話の中から、求めている人材が私より若い世代であることが感じられることが多かったように思います。
具体的には、40代未満の人材を求めていることが多かったです。
一方で転職エージェントも利用しましたが、地方都市ということもあり、電話で履歴や職務経歴を話しただけで、紹介は1件もありませんでした。
5社、6社と受けるも、なかなか採用の通知はありません。
焦りはどんどん大きくなります。
それでも何とか気を奮い立て、自宅から片道20kmぐらいの距離にある非鉄金属製造会社の面接に向かったところ、そこではじめて、確かな手応えを感じることができたのです。
更には、二次面接の際、面接官であった社長が、私と共通の知り合いがいることが分かり、それで話が盛り上がったりもしまして。
──それが理由かどうかは分かりませんが、結果として、私はその会社から内定をいただくことができました。
あわせて読みたい
-
- 「転職が決まらない…辛い」長引く転職が辛くなったら見直したいポイント
- 思いのほか転職活動が長引いている場合は、いったん見直しの機会を持つことが大切です。転職が長引く際に要因になりやすいこと、適切な対処法・進め方を紹介します。 ...
4転職後
転職後の新しい環境で、待ち受けていた状況は。

入社後の状況は、想像していたとおり、いいこともあれば悪いこともある、というものでした。
どんな会社でも、入社して初めて分かることがあります。
最も苦労したのは、建設業から非鉄金属へと、全く違う業界に進んだため、専門用語が分からないことでした。
人事労務担当といえど、業界のことには詳しくなければ仕事は務まりません。
例えばお客様から電話がきて、
- お客様
-
「このサイズの商品はありますか? なければ代替品を教えてください。すみません、できたら急ぎで」
と聞かれたりするわけですね。
- 私
-
「私は専門でないので、分かりません」
──まさか、そんな風に答えたら大変ですので、
- 私
-
「詳しくはのちほど営業からご連絡させますが、素材の違う○○ならどうでしょうか」
と答えるようにしていますが、その「素材の違う○○」を言えるようになるまで、大変な苦労がありました。
また、どうしても過去の仕事のやり方が出てしまうもので、それで悩んでいたとき、妻が
- 妻
-
「あなたは新入社員でしょう。今までのやり方にこだわっていてはだめよ。一から出直さないと」
と言われたのは、まさに目からウロコでした。
そうなんです、異業種への転職は(必ずしもそうでないことはあるでしょうが)、いったん「新入社員」に戻ることなんですよね。
頭では理解しているつもりでしたが、身体と行動が付いていってなかった──、そのことに気付けました。
あわせて読みたい
-
- 転職後のミドル世代は50%が「職場に馴染めない」と悩むことに?実体験と対策を紹介!
- 転職をしたミドル世代の人のなかには、中途入社した先の会社で新たな問題を抱える人も多いです。ミドル世代の人が転職した際に、新しい人間関係と職場環境に馴染むためのポイントをご紹介します。...
5その後、どうなったか。
これから先、目指したいこと。

入社して3ヶ月後、試用期間が終わると同時に「課長代理」の役職をいただくことができました。
そこから仕事は順調に進んでいますが、最も強く感じたこと、学べたことは、次の2点です。
- 50代の転職は、非常に厳しい
- 資格があると非常に有利
人事労務担当として、私が持っている資格は「第一種衛生管理者」だけです。
間接的には教員免許もありますが、それよりもこの職種の転職で有利なのは、「社会保険労務士」でしょう。
社会保険労務士とは
企業を経営して行く上での、「労務管理」や「社会保険」に関する相談・指導を行う職業または資格のこと。「社労士」の略称で扱われることが多い。
主な仕事内容は、労働保険(労災保険・雇用保険)や社会保険(健康保険・厚生年金保険)の書類作成・届出、その他採用・育成といった人事面の制度
試験は難しく合格率も低いですが、それに見合うだけの価値はあると思います。
あわせて読みたい
-
- 社会保険労務士(社労士)の資格は転職に有利? 社労士が活かせる職種と資格の取得方法
- この記事では、社労士の仕事内容や資格取得のメリット、試験の難易度や勉強法まで詳しく解説していきます。社労士に興味のある方、転職やキャリアアップに資格取得を検討されている方は是非ご参考ください。 ...
上司はまた年下となりましたが、既に慣れていたこともあり、違和感はありませんでした。
たとえ年下でも、上司は上司。やはり優秀です。
彼に対するリスペクトを忘れずに接すれば、仕事はうまく回るものです。
反面、後悔していることは、複数の転職エージェントを利用するべきだったということです。
今回はハローワークとエージェント1社だけで転職活動を行いましたが、最初の面接から内定をいただくまで約10社、半年という時間が経過してしまいました。
窓口を広く持てば、もっと早く転職できたかもしれないと思います。
◇ ◇ ◇
今後取り組んでみたいことは、「社会保険労務士」の資格取得です。
やはり「士業」というのは価値もやりがいもある仕事だと思います。
さらには専門知識を得ることで現在の仕事も着実に行えますし、定年を迎えたあとでも独立開業すれば道は開けます。
そしてそのあとは、「遺品整理士」など、終活に関する資格も取得したいと思っています。
終活は今や中高年の大きな関心事ですし、私自身も、社会保険労務士から人の一生にまつわるお手伝いができたら幸せだと思っているからです。
面接、採用、そして定年を迎えたあとの終活まで、すべて相談に応じることができる、そんな「ワンストップサービス」に近い形で社会貢献ができたら、と今は思っています。