広告代理店ってどんな仕事?求められる知識・スキル、未経験から転職する際に準備するポイント
[最終更新日]2021/12/31

「広告代理店」というと、皆さんは何を想像されるでしょうか?
かつては、トレンディドラマでお洒落な仕事の代表格として、主要な役どころの俳優が演じていたりもしましたが、単なるドラマなどからのイメージがもたらす「憧れ」だけで、実はその実態はよくわかっていない人が、意外と多いように思われます。
目次
1)未経験・異業種の方が知っておきたい、広告代理店のお仕事
広告代理店って、どんなお仕事なの?

広告代理店の業務は、「広告を出したい企業・組織(広告主)」と「広告を掲載してもらいたい企業・組織(媒体社)」の仲立ちをすることです。
「広告を出したい企業・組織(広告主)」とは、自社の製品やサービス、もしくはイベントなどの告知、人材の募集など、幅広く知らしめたい企業・組織(や個人)を指します。
「広告を掲載してもらいたい企業・組織(媒体社)」とは、例えば、新聞社や雑誌社、テレビ局、Webメディア運営会社が挙げられます。
広告代理店は、そんな広告主と媒体社を仲介し、そこで発生した「広告掲載」の手数料を得ることで(併せて、掲載する広告自体を制作することで、)収益を得るのです。
広告代理店が取り扱う、「広告主」とは──

広告主とは、広告を出したいと考えるあらゆる企業を指します。誰もが知る大手企業から、(もしかすると)あなたの近所の町工場まで、様々な業種分野が対象となります。
広告代理店の多くは、顧客となる広告主の業種をある程度絞り込むことが一般的です。特に中小広告代理店はその傾向が強く、電通や博報堂といった大手広告代理店も、広告主の業種により社内組織を分割しています。
なぜ広告主の業種ごと絞っていたりセクションを分けているのかというと、「広告を出す」ということは、その広告主の事業内容や製品・サービスを深く理解する必要があるからです。つまり、広告代理店は「広く浅い」知識よりも、「狭くても深い」知識が求められるということですね。
広告の「配信先」は──

広告の「媒体(配信先)」は多種多様です。
例えば、皆さんが知る大手新聞社やテレビ局、などのマスメディアをはじめ、特定の業界や地域、コミュニティに特化したWebメディアや雑誌といった媒体があります。
そして、これらを購読・視聴する人は、そのメディアによって様々な特徴があります。
広告主が、自社製品・サービスについて広告を通じて「誰に」伝えたいのか、を明確にし、更には「それを実現するために最適な媒体はどこか」を考えて、配信先を定めていく──それも、広告代理店の重要な仕事なのです。
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2)広告代理店での業務では、どんな知識やスキルが必要?

広告代理店の業務で必要なスキルは、広告主に直接関わる営業であろうと、広告制作を担う制作担当の者であろうと、「情報収集力」、「コミュニケーション力」、「想像(創造)力」の3つです。
情報収集力

広告代理店が仕事を獲得する上で、先ずは広告主となる企業(または個人)そのものに関心を持ち、理解しない限り仕事を獲得することはできません。
広告主やその業界の基本的な情報は、インターネットや雑誌、書籍などから少なからず収集していくことができるでしょう。また、それらを参照していく中で、実際に類似する広告が掲載されているのを確認することができます。
そういった情報を収集しているからこそ、広告主に対して提案も出来るようになるのです。
例えば、あなたがケーキ屋さんから広告出稿を依頼されたとします。もしあなたがケーキ屋について何も知らなければ、きっと「どうすれば良いか」途方にくれますよね。
ですが、前述のとおり情報収集しておけば、「ケーキの広告は若い女性向けの媒体に多い」であったり、「ケーキ好きな人は、パティシエを必ずチェックする」といったことにも気づけます。
そして、そういった情報収集によって得られるイメージやアイデアは、広告をプランニングする際にとても役に立つのです。
コミュニケーション力

「情報収集が大事」といっても、表に出てこないような「生の情報」も少なからずあるものです。また、広告主のほうでも、「どんな広告を出していけばよいのか」というように「自社の要望を形にできていない」ということは、非常によくあることです。
こうした「声なき声」に耳を傾け、これを形にしていく為には、広告主との関係性を深める以外にありません。そこで求められるのが「コミュニケーション力」です。
これは、広告主との関係性だけでなく、広告を掲載する媒体社や社内のスタッフとの連携を取っていくうえでも、不可欠な要素です。
想像力(創造力)

そして、得られた情報を広告へと形作っていくための最後のスキルが「想像(創造)力」です。
広告主が、自社の製品やサービスを伝えるべき人々はどんな人々なのか、その人々はどんな形で情報に触れているのか、これを得られた情報をもとに想像することから、広告の提案は始まります。
そして、その想像を裏付けるべく、様々なデータを用意し、広告主に広告を出してもらうべく、納得する材料を提示することが求められます。
このように既存の媒体に広告を掲出することもありますし、広告主の要望によっては、既成の枠にとらわれない提案、「創造力」をもとめられることもあります。
そのほか必要となる業務知識は…
業務知識という点では、制作担当であれば、Adobe IllustratorやPhotoshopに関する知識は最低限必須で、それに加えて広告を展開するメディアにより身につける技術は変わってきます。
営業では、これらの操作はできなくても、印刷やWebの制作手順をある程度理解しておくことは必要でしょう。ですが、上記に挙げた3つスキルを備えていることが遥かに大事ですし、それ以外については学ぶ姿勢を備えていれば、必然的に身についてくるものです。
3)未経験から広告代理店に転職する際の、準備しておきたい3つのポイント

未経験から広告代理店に転職する際に準備しておきたいポイントは以下の3つです。
- #1 広告そのものに「改めて」目を向ける
- #2 転職を考える広告代理店が、どういった広告を扱い、どういった顧客を対象としているのか調べる
- #3 広告業界のトレンドを把握しておく
#1 広告そのものに「改めて」目を向ける

世の中には多種多様な広告が溢れています。
一見、広告に見えないものでも実は広告でした、というものは結構多いものです。例えば、いつも購読している雑誌で、気になる記事があったと思っていたら、ページの端に「PR」の文字。これは、記事の体裁にて製品・サービスをアピールする記事体広告と呼ばれる手法です。
マスメディアに露出している広告が全てではありません。広告が我々の日常生活の一部に実は組み込まれていました、ということは、近年ますます多くなってきています。
自分が志望する広告代理店の業界に囚われることなく、注視しておくと良いでしょう。
また、広告に使われる人物(モデル)や背景、音楽、言葉、小物、テーマ・・・それぞれ、「それがなぜ使われているのか」について改めて考える習慣をつけておくと良いでしょう。
すると、普段何気なく見ていた広告が、実は非常に考え抜かれた構成であった、、、ということも、良くあるのです。
#2 転職を考える広告代理店が、どういった広告を扱い、どういった顧客を対象としているのか調べる

取り扱う広告の内容により、営業スタイルは大きく異なります。
電話営業が中心で、広告掲載の数をこなしていくスタイル(テキスト広告が中心となる人材募集広告を取り扱う代理店に多い)や、顧客とじっくり距離を詰めていきながら、媒体提案・広告をつくりあげていくスタイル(クリエイティブ、業界知識が求められるBtoB商材広告を扱う代理店に多い)など経営者の方針、顧客の質も加わって様々です。
ご自身の求めるワークスタイルがどういった形態なのかということを熟考し、自分にあう形態の広告代理店を絞り込んでいくことが必要です。
広告代理店のWebサイトには主要な取扱媒体や、制作実績が掲載されていることが多いので、応募をする前にそれらを確認することによって、その企業の業態や特性をある程度予想していくことは可能です。
#3 インターネットと、インターネット広告について知っておく

近年のスマートフォンやタブレットのモバイルデバイスの発達、クラウド技術などの隆盛は、広告業界も多分に影響を受けています。以前は「4大広告」と謳われていたテレビ・新聞・ラジオ・雑誌のメディアも、テレビ以外はその効果が段々下降してきており、相対的に「インターネット広告」の価値上昇が続いています。
インターネット広告の世界では、クリックされた数など、従来のメディアでは測定が難しかった広告効果の検証が容易になりました。
そのことから、インターネット広告では「広告を出した成果」を最大化していくための技術の発達が進み、例えば「リアルタイムで広告を入札する」であったり、「効果を見て、自動で広告原稿がより効果の高いものに切り替える」といった技術が普及してきています。
これまでインターネットから距離を置かれていた方の場合は、まずはインターネット、特にスマホのインターネットメディアに慣れ親しむようにしましょう。
どのような情報が、どういった形で配信されているのか。また、どのような広告があって、それはあなたにどんな印象を与えるのか──等。
広告代理店で働くことになった際には、直接的か間接的かの差はあるにせよ、「インターネット広告」とは必ず付き合っていくことになるでしょう。その時に、「入っていける」ための前知識はしっかり持っておくことをおすすめします。
4)年代別 広告代理店への転職で注意するポイント

続いては、広告業界の転職を考えたときに、年代別に注意するポイントを上げていきたいと思います。
20代が広告代理店に未経験で転職する場合
一般的に20代での転職は、「これからの成長のポテンシャルが重視される」と言われているように、広告業界でもそれは変わりません。
前章で挙げたとおり、インターネット広告の相対的な価値はますます上がっていくことから、これらに対する技術吸収の意欲があることは積極的にアピールすべきでしょう。
ただ、紙媒体を中心に広告を取り扱ってきた広告代理店では、社員全体が高齢化し、若返りの一環で採用をするものの、新領域のメディアに関するスキルアップは「本人任せ」、入社してみたら社員は40~50代ばかり、ということはよくある話です。
広告代理店は、得意とするメディアであったり業種であったり、様々な形態がありますので、ご自身の望む方向性をしっかり検討し、ご自身が望むスキルを磨ける場なのかどうなのか、というのはしっかり検討したうえで進めていくことをおすすめします。
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30代が広告代理店に未経験で転職する場合
30代での転職は、即戦力重視となることから、人材募集の際は、「未経験者歓迎!」と大きく謳っていながらも、実際の現場では「このくらいはできるだろう」と見られがちです。
特に異業種からの転職の場合は、広告業界の知識を深めていくための「ご自身の努力」は当然不可欠です。
また、分からないことは「謙虚」にかつ「速やか」に吸収していけるのかどうかという点が成否の鍵となるでしょう。
また、異業種からの転職であれば、可能であれば、以前在籍されていた業種を顧客にする、もしくは営業拡大の領域として考える広告代理店を選ばれるようにしたほうが、ご自身の知識も活かすことができますし、採用する側も貴方を貴重な戦力として考えるでしょう。
特に知識習得に時間や専門教育を要する広告業界(例えば、製薬会社・病院等を顧客に持つ専業代理店など)では、慢性的に人手不足となっていることが多く、未経験の方でも活躍できるフィールドはまだまだ広がっています。
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40代が広告代理店に未経験で転職する場合
30代での転職以上に厳しい環境にさらされるのが40代です。
上記に状況に加えて、ご自身の管理や周囲へのマネジメント能力は、「当然」備えているものとして周囲から認識されていますし、異業種からの転職は、様々な面で極めて厳しいということは認識してくと良いでしょう。
ただ、例えば印刷や、イベント施工等、広告代理店の業務に近しい業種からの転職の場合は、その経験と実績をアピールしていくと良いでしょう。なぜなら、制作志望の方は使用するソフトウェア等はほぼ同じですし、営業職の方でもおそらくこれまでの知識の延長で広告代理店業務としての進行管理は可能です。
40代の未経験での広告代理店への転職で大切なのは、「これまでの経験や積み上げたスキルが、発揮できるフィールドを見出すこと」。
広告代理店はターゲットとする業種や取り扱うメディア媒体等、様々な形態があります。その中には、あなたが培った経験・スキルが発揮できる企業も少なからずあるでしょう。
そういった、「自身が活躍できそうな企業」という視点で、企業を探されることをおすすめします。
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5)まとめ それでも、やはり広告代理店は面白い

未経験での広告代理店の転職は、採用する側も否応なく慎重になるものです。
ですが、そこでご自身の能力や経験、熱意をアピールすることは、まさに商品をプロデュースする広告代理店としての業務と同様のものです。そういった意味では、既に広告代理業務としてのお仕事と経験の蓄積は、そこから始まっているのかもしれません。
冒頭では、「憧れだけで…」といったことを書かせて頂きましたが、ゼロから物を作り上げていく楽しみは、何者にも代え難い経験だと、私は思っています。
そのような楽しみを、この記事を最後まで読んでいただいた皆さんにもぜひ味わっていただけることを、願ってやみません。