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「私がいないと会社は回らない」? 私たちの働くうえでの「存在意義」を考える

[最終更新日]2019/05/07


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私たちが働くうえでの存在意義って何だろう?

転職という言葉が一瞬頭をよぎったとき、「転職せず今の職場に留まる」という決断を下す人もいるはずです。転職を断念する理由はさまざまですが、責任感の強い人ほど「辞めたら皆に迷惑をかけてしまう」「私がいなくなったら困るだろうから」という理由で転職を踏みとどまる傾向があります。

目次

1)「私がいないと会社は回らない」は存在価値と言えるだろうか?

「私がいないと会社は回らない」とは、裏を返せば「私がいることによって仕事が滞りなく進んでいる」ということです。このような考え方をする人は、一見すると責任感が強く、相応の能力を備えているように思えます。

しかし、果たして本当にそうなのでしょうか。実は、「私がいないと会社が回らない」という発言を支えている思考は、2つの点で矛盾を抱えているのです。



もし本当に「誰かがいないと成立しない会社」なら組織として重大な欠陥

会社組織は何のために存在するのでしょうか。もし創業者が自分一人で全ての仕事をこなし、事業を拡大し続けられるのであれば従業員を雇う必要はないはずですが、現実はそうではありません。会社には社長を筆頭とする経営陣以下、管理職や一般社員が働いています。

創業者一人ではできないこと、こなし切れないことが必ず出てくるからです。しかも、従業員は全員が同じ役割を担っているわけではありません。会社には部署があり、各部署が役割を分担することで組織が成り立っています。

では、仮にそのうちの1つの部署で突出して能力が高い人材がいたとします。その社員にしかこなせない仕事がいくつもあり、辞めたら誰も後を引き継げないとしましょう。しかも、その社員が辞めることで他部署にも影響が及び、組織全体が回らなくなってしまうことが明白だったとします。

この状況が現実に起こり得るとすれば、その企業にとって重大なリスクであり、組織として欠陥を抱えていると言わざるを得ません。

一個人の力では成し遂げられない大きな目標やビジョンを体現するために、会社組織は存在します。「ある人がいないと仕事にならない」というのは、そもそも会社組織の存在意義と矛盾しているのです。



「私がいないと回らない」「だから頑張る」では誰のためにもならない

さらに、「私がいないと回らない」という思考そのものが、当の本人にとって大きなデメリットになりかねません。なぜなら、「私がいないと回らないから転職しないでおこう」と決断を下すことは、その人にとって働き続けるモチベーションそのものになりかねないからです。

人は働くことによって他者から認められたいという欲求を持っています。この承認欲求を、たとえば「顧客から喜んでもらえた」「世の中に新しい価値を提供できた」といった結果によって満たしているのであれば、本人にとっても世の中にとってもメリットがある働き方と言えるでしょう。

ところが、自分が属している組織や部署の中で、ごく限られた同僚や上司に対して「私が辞めたら困るはず」と考えている状態は、世の中全体として見たとき、自身の能力を還元できている範囲が非常に狭いと言わざるを得ません。視野を広げてより大きな目標に向かって仕事をし続ける場合と比べると、自身の成長という面でも伸び悩んでしまう恐れがありそうです。

このように、「私がいないと回らない」という考えから得られるモチベーションは、誰のためにもならない可能性があるのです。

では、「私がいないと会社が回らない」という思考にどういった弊害があるのか、具体的な事例を使って見ていきましょう。



2)事例➀ 「マニュアル化できない」という思い込み

仕事って経験が全てですよ?マニュアルになんてできっこありません。Mさんの場合

Mさんは電子機器メーカーで営業事務をしています。入社12年目になり、中堅社員として営業担当のサポートを一手に引き受けているMさんの仕事ぶりは、きめ細やかで他の人では真似ができないと言われていました。
たとえば、営業担当のうち誰がどのような伝票記載ミスをしやすいか、見積内容に誤りが多い取引先はどこなのか、Mさんは仔細に把握していました。

あるとき、上長がこんなことを言い出しました。

上長

「Mさん1人に任せてしまっているから、もしあなたが病気や怪我で入院でもしたら困ってしまう。何かあったときのために、マニュアルを作ってほしい」

結果的に、Mさんはこの依頼を断りました。仕事をこなすには経験を積むしか方法がなく、10年以上かけて培ってきた複雑なノウハウを簡単にマニュアルなどにできるはずがない、と思っていたからです。

ところが、その半年後にMさんは交通事故に遭ってしまい、3ヶ月間におよぶ入院とリハビリを余儀なくされます。その後、幸いにも職場に復帰することができましたが、復帰した職場で目にした光景にMさんはショックを受けます。

かつてMさんが担当していた仕事を、入社3年目の若手社員が立派にこなしていたのです。彼女はMさんとは違い、仕事の要旨を整理してマニュアルにまとめることに長けていました。しかも、マニュアルを営業担当向け・顧客向けにアレンジし、伝票類の提出ルールを共有できるようにしていました。

そのため、営業担当や顧客ごとに独自の対応をしなくても、統一したルールで運用できるようになっていました。「マニュアルなどできるはずがない」と考えていたのは、Mさんの思い込みに過ぎなかったのです。



経験則で仕事が回っている状況は「ローカルルールの温床」

Mさんは、自身が12年かけて蓄積してきたノウハウを特殊なスキルと考え過ぎていました。むしろ、Mさんの個人的な経験則や感覚だけが頼みの綱という状況は会社にとってリスクであり、他の人でも担当できるよう仕組み化するべきだったのです。誰かの頭の中にしかない経験則で仕事が回っている状況は、ローカルルールが際限なく増えていく原因になりやすいため注意が必要です。

しかし、Mさんの中では「12年の経験」「私が社内で一番把握している」といった自負があるため、他の人でも代替可能な仕事かもしれないことを認められませんでした。もしあのままMさんが5年、10年と担当し続けていたとしたら、ローカルルールがさらに膨張し、結果的にMさん自身の首を絞めることになっていたかもしれません。



3)事例② 責任を背負い込んでしまう生真面目さが裏目に

どんなに遠い場所でも、自分の足で向かうことに意味があるんです!Tさんの場合

TさんはOA機器の販売代理店でサービスマンを務めています。担当しているエリアは中部・北陸地区全域で、愛知から静岡や長野、新潟、富山といった地域を支社のサービスマン5名で駆け回る日々を送っています。

Tさんには「自分の顧客は必ず自分で対応する」という信念があります。扱っている複合機の機種は限られているため、他のサービスマンは自分が対応できない場合は別のサービスマンに対応してもらうようにしていました。しかし、Tさんは必ず自分で対応すると決めていました。「お客様は、ちょっとした会話や気配りで喜んでくれることだってある。だから絶対に自分で行くべきだ」と考えていました。

ある日、偶然にもほぼ同じタイミングで8件のサービスマンコールが届きました。例によってTさんは「自分が行く」という信念を曲げず、中部・北陸エリアの各地に出張中だった他のサービスマンを頼らないことにしました。8件のうち2件は愛知と新潟の顧客だったため、移動して対応するのは少々大変ですが仕方ありません。結果的に、最後に新潟の顧客先へ到着し、対応が完了したのは夜9時でした。

翌日、Tさんの上長にクレームの電話がかかってきました。「朝10時にサービスマンコールを入れたのに、どうして到着まで11時間もかかるのですか?こちらはほぼ丸一日、仕事が進まなかったのですが。もっと早く対応してくれる代理店があれば、今後はそちらにお願いしようかと思っています・・・



誰にも代替不可能な仕事はほぼ存在しない

Tさんは、自身の信念と顧客利益を天秤にかけていません。Tさん自身が訪問できないことで「ちょっとした会話や気配り」をしてもらえないことと、丸一日仕事にならない状況が続くこととを比べれば、どちらが顧客の利益を損なっているかは自明であるはずです。

偶然にも同じタイミングでサービスマンコールが殺到したのであれば、他の4人のサービスマンの手を借り、できるだけ早く顧客の不満を解消することのほうが、はるかに自社への信頼度を高めることにつながったのではないでしょうか。

複合機の不調を解消することは、他の4人でも問題なくできることなのですから、「訪問するのは自分でなくてはならない」というのはTさんの思い込みに過ぎないのです。このように、「誰にも代替不可能な仕事」は、よほど専門性の高い仕事でない限り、ほぼ存在しないと考えて差し支えないでしょう。



4)事例③ 辞めるのは無責任と思い込まされていた?

私が辞めたらどうなる?いや、ダメに決まってるよな……。

居酒屋チェーンの店長を務めるSさんは、度重なる長時間労働で心身に変調をきたし始めているのを感じていました。しかし、それでも辞めるわけにはいかないと歯を食いしばって勤務し続けていたのです。

Sさんの店舗のある地域を統括するエリアマネージャーは、事あるごとに「物事を途中で投げ出すな」と言い続けていました。売上目標にしてもアルバイトの育成にしても、途中で投げ出すのは人間として卑怯だと言うのです。その最たるものが「退職する」ことで、「店長が辞めるのは、自分が雇ったアルバイトを見捨てるようなもの」と常々聞かされていました。

「辞めるなら、後任が店舗を回せるレベルになるまで育ててからにせよ」とも言われていました。Sさん自身も、「自分が辞めたらこの店はどうなる?」「アルバイトの子たちがかわいそうだ」と感じるようになっていました。

Sさんは結局、丸3年間を店長として務め、ホテルチェーンに転職しました。後で知ったことですが、Sさんの店舗があったエリアでは人の出入りが激しく、店舗によっては毎月のように店長が交替していたそうです。そのたびに人員を補充するのが大変なので、退職を抑えるためにエリアマネージャーは威圧的な言い方をしていたようです。

今になって冷静に考えてみると、店長といえど一社員であって、他の人でも務まる仕事だったに違いありません。



常識らしく聞こえる「責任論」には要注意

上の事例で注目すべきは、エリアマネージャーの発言1つ1つを切り取ったとき、どことなく「常識的」で「立派」なことを言っているようにも受け取れる点です。売上目標やアルバイトの育成を「途中で投げ出すな」というのは正論のように聞こえますが、「退職」までこれと同列にされてしまうと、理屈の上では「従業員は誰一人として退職してはいけない」ことになってしまいます。

この事例のように、常識らしく聞こえる「責任論」には注意が必要です。くり返し刷り込まれるうちに、「自分の考えが甘いのかもしれない」「考えが甘いと思われたくない」といった思考に陥り、「辞めずに続ける」ことが最大の目的になってしまう恐れがあります

とくに心身が疲弊しているときは、冷静な判断を下せない状態になっていることもあり得るため、職場以外で身近な人に相談するなどしたほうがよい場合もあります。



5)「私がいないと回らない」思考から脱却するには?

特定の社員の力で組織が回っている状態のデメリットを知る

仮に、今携わっている仕事が「私がいるから回っている」とします。これが事実だとすると、長い目で見たとき組織には次のデメリットが生じます。

  • あなたが休むと誰も代わりが務まらない(=休めない)
  • スキルが継承されないので、組織のリソースにならない
  • 退職する際の引き継ぎに膨大な時間と労力がかかる

このように、「私がいるから回っている」のは「私の能力が優れている」ことを証明しているどころか、会社組織として重大なリスクになりかねないのです。「私さえ休まなければいい」「辞めずに続けるから大丈夫」と考えている人は、突然の病気・怪我のリスクや、将来的に誰もが定年を迎えることまで想定しておくべきでしょう。

会社組織は「特定の誰かがいなければ仕事が進まない」という状態に陥らないように運用されています。部署が分かれていたり、複数の担当者が配置されていたりするのはそのためです。個人では成し遂げられない目標やビジョンを達成するために組織が存在しているのですから、特定の社員の力で成立している状態は、そもそも会社組織として好ましくありません。まずは、このことをしっかりと理解する必要があります。



持ち運び可能なスキルや実績になっているか定期的に振り返る

「私がいないと回らない」「だから辞めない」という思考は、その人自身のキャリアにも良くない影響を与える恐れがあります。「他に務まる人がいなかった」のは極めて限定的な状況で再現性がありません。そのため、たとえば転職の面接選考でこの状況を伝えたとしても、他社で同様の能力を発揮できることをアピールする材料にはなりにくいのです。

また、「私がいたから回った」と認識していること自体が、裏を返せば「協調性に欠けるのではないか」「自己中心的な仕事の進め方をする人物なのではないか」というマイナスの受け止め方をされる恐れさえあります。このように、「私がいたから会社の仕事が回った」は持ち運びが困難なスキルであり、客観的に評価した場合に「実績」とは見なされない可能性が高いのです。

今後のキャリアを考えた場合、どこかのタイミングで転職する可能性がゼロではないはずです。いま所属している組織でしか通用しないスキルに縛られてしまっていないか、視野が狭くなってしまっていないか、ときどき振り返ってみることが大切です。



まとめ 時間軸・空間軸を意識的に広げ、視点を変えてみよう

「私がいないと会社が回らない」という考えは、責任感が強く真面目なタイプの人が陥りやすい思考と言えます。本人にしてみれば、目の前の仕事に集中し、会社のために頑張っているわけですから、その状態が良くないことに気づくのはなかなか難しい面もあるかもしれません。

「今この会社で」「ここの部署で」といった局所的な視点だけでなく、自身の今後のキャリアや会社組織としてのあり方といったように、視点を意識的に広げて物事を考えてみる時間を持つことも大切です。日々の仕事に追われがちだった人は、この機会に「私がいないと・・・」という思考に陥っていなかったか、振り返りをしてみてもいいかもしれません。