生活相談員(ソーシャルワーカー)に向いている人は?仕事内容と転職の際に求められる知識・スキルを紹介
[最終更新日]2022/04/16

介護士や看護師の業務内容はイメージ出来るけれど、『生活相談員(ソーシャルワーカー)』についての業務と言われると、なんとなくは知っていても、具体的には答えられない──、そんな方が多いのではないでしょうか。
実際に介護士や看護師として同じ職場で働いている人ですら、その業務内容をよくは分からないという方も意外と多いようです。
目次
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1)生活相談員(ソーシャルワーカー)とは

生活相談員は介護福祉施設(特別養護老人ホーム、ショートステイ、デイサービス等)において、相談支援業務を行う職種です。
介護士が「ケアワーカー」と呼ばれるのに対し、生活相談員は「ソーシャルワーカー」と呼ばれています。
利用者(入所の場合は入所者と呼びますが、今回は統一して『利用者』と呼びます)や、家族、ケアマネジャー、その他関係事業所と連絡・調整・相談をおこないます。
例えば、サービス利用時に気付いた利用者の状態変化等、家族やケアマネジャーに報告し、場合によっては医療機関に繋げたりすることも業務の一つです。
また、事業所(介護施設)との契約、サービス担当者会議への出席、介護を行うにあたり個別援助計画の作成や、サービス調整等を行います。さらに、施設行事などの段取りや連絡・調整を任されることも多いです。
事業所の規模や方針にもよりますが、人手不足から介護現場の一部を兼務することもあります。
大変なようではありますが、ケアマネジャーや他関係事業所、医療機関などと連携をとるにあたり、直接介護現場を見て知っておくことは、自身の連絡・調整をスムーズにさせてくれる力になってくれます。
そう考えると、介護現場の兼務仕事も生活相談員として重要な業務と捉えることができます。
2)生活相談員(ソーシャルワーカー)の主な仕事内容
生活相談員(ソーシャルワーカー)は、介護士や看護師などのように直接的な介護業務ではなく、契約から始まり、相談に乗ったり、介護に関する計画を立てたり、連絡・調整・相談をしたりする、間接的な業務、いわゆる縁の下の力持ち的な事を行ないます。
その為、利用者からすると、『事務の人』と見られることもあります。特別養護老人ホームを例にあげると100人の入所者に対し、生活相談員1名以上という、人員配置が定められており、一人仕事が多く効率的な作業を要求されます。

- 介護サービスの契約
- サービス担当者会議への出席
- 個別援助計画書の作成
- 利用者や家族、ケアマネジャー等との連絡・調整・相談
- その他の雑務
介護サービスの契約
2000年に介護保険がスタートし措置から契約の時代へ。全ての介護サービスは、契約から始まります。
この契約時に、施設サービスを利用するにあたっての注意事項等を、利用者や家族へ説明します。利用者が不安なくサービスを利用できるように、また後々トラブルが起きないように、介護保険や施設サービスについてしっかりと説明し、同意を得る事が重要です。
サービス担当者会議への出席
介護サービスは、ケアマネジャーが利用者や家族から状況や要望を聞き取り作成された『ケアプラン』を基に、サービス提供が実施されます。
サービス担当者会議でケアプランの原案を使って、介護サービスについて話し合いをします。例えば、デイサービスの生活相談員であれば、ケアプランで立てた目標を達成させる為に、デイサービスとして、どのような支援を行なえば良いのかを検討します。
個別援助計画書の作成
個別援助計画書は、ケアマネジャーが作成したケアプランに沿って、作成します。
個別援助計画書は、本来管理者が作成するものとされていますが、ほとんどのデイサービスでは生活相談員が作成しています(管理者と協働で作成することとされています)。
利用者や家族が望む生活が送れるよう、また目標が達成できるように、事業所としてどのような支援を行なえば良いのかを考えます。
その際に注意すべき点、例えば既往歴、認知面、身体機能、性格、生活歴、趣味活動等を考慮した上で、個別的に援助計画を作成します。
利用者や家族、ケアマネジャー等との連絡・調整・相談
この連絡・調整・相談が一番大きなウエイトを占めます。
サービス利用中、利用者に急な状態変化が見受けられた際には、すぐに家族やケアマネジャー、場合によっては医療機関等、必要な関係機関へ繋げる必要があります。
又、サービス利用の調整(例えば、利用日変更や送迎の調整対応など)をしたり、利用者や家族から直接相談を受けることもあります。
場合によっては、ケアマネジャーよりも、コミュニケーションを取る頻度が高く、利用者や家族から直接相談を受けるケースも多くあります。
その他の雑務
施設で行なう行事(季節行事や慰問等)の手配や、急な来客への対応等々、幅広い雑務が多く、計画通り業務が行なえない事が多々あります。
介護職や看護職はチームでフォローし合えますが、生活相談員は一人仕事がほとんどの為、丁寧且つスピーディーな業務が要求されます。
また、事業所の方針にもよりますが、生活相談員は、送迎、風呂介助、排泄介助、食事介助など、介護現場の仕事や、請求業務までも、様々な場面に携わる事があります。
特に小規模の事業所は、生活相談員がほぼ全ての業務に携わっているケースが見受けられます。
3)生活相談員のやりがい、大変な点、「向いている人」は?
生活相談員は利用者や家族と、介護サービス事業所とのパイプ役です。言い換えると事業所の顔となります。家族に“安心して介護を任せられる”と思って頂けるような対応も必要です。
多忙な職種ではありますが、 “やりがい”があるからこそ続けられるというもの。本当に困っている、支援が必要である利用者や家族に対し、親身になって相談支援にあたります。
だからこそ、適切な支援が行なえ、本人や家族の望む生活が送れるよう支えになれた時の喜びは、他の何にも代えられないものとなります。
生活相談員の仕事のやりがい

- 感謝の言葉を頂ける
- 幅広い業務に携われる
- 常に勉強する機会を得られる
介護サービスを利用する際、利用者が不安な気持ちを持っていることは当然です。大多数の利用者は「人の世話になりたくないが仕方がない」と思っているはずです。
家族としては、「ここに父を預けて本当に大丈夫なのか…」と不安な気持ちはあるはずです。
そういった利用者や家族の気持ちを汲んで、個別援助計画書を作成し、介護現場へケアを委ねます。利用者や家族の抱えている困り事や不安を解消できた時に頂く「ありがとう」の言葉は、忘れられないものとなります。
また、先にも説明済みの通り、契約、サービス担当者会議への出席、個別援助計画の作成、連絡・調整・相談、その他の雑務まで、非常に幅広い業務を担います。そのやりがいは言うまでもありません。
そして、常に勉強が大切です。介護保険法についても把握しておく必要があります。
3年に1度の法改正や、その間にもローカル改正が度々あります。
その法改正に合わせた事業所の動き方も必要になって来る為、介護保険法の動向も注意して見ていく必要があります。
また、定期的な外部の研修などで、常に情報を収集する事が大切です。
さらに、利用者は一人一人状態が違う為、疾患やケア等に関わる事は、常に勉強を続ける事が必然的に必要となってきます。
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生活相談員の大変な点
相談員業務をしていると、良いことばかりではなく、大変な事もあります。
全体を見渡せば見渡す程、やることは泉のように湧き出てきます。やりがいがある反面、忙しく大変という風にも捉えることが出来てしまいます。
しかし、ピンチはチャンス。大変な事はそれを乗り越えれば、自身の力となり、プラスに変わります。そのように考えて、以下の3点を乗り越えていきたいものです。

- 幅広い業務で心身ともに大変
- クレーム対応
- 時間外勤務も多い
先にも述べた通り、介護士や看護師は専門職同士で業務をフォローできますが、生活相談員は一人仕事のことが多く、手伝ってもらうことが難しいケースがほとんどです。
そして、予定していない突発的な業務対応も多く、仕事の予定が組みにくいという事が大変な点として挙げられます。予定できている業務は、出来るだけ正確に早く行ない、突発的な業務もある程度予測して動く事がポイントとなります。
そして、生活相談員は苦情窓口担当となることが多いです。
家族等から感謝の言葉をもらうことも多い反面、苦情対応もしなくてはいけません。ただ謝罪して終わりというわけではなく、その状況確認をし、原因を調べ、今後繰り返さないように体制を整えて行く中心的な役割も担います。
中には理不尽な事を言ってくる利用者や家族もいますが、そういったケースは上司に相談して、一人で抱え込まないように対応を検討しましょう。
一人仕事がゆえに、時間外勤務もしばしば見受けられます。例えば、半日は自身の業務を行ない、もう半日は現場やその他の雑務。そして、時間外に自身の残りの業務を行なう等と、忙しい日々を送ります。
入所系の生活相談員の場合、急な対応で休日に出勤せざるを得ない、という施設もあるようですので、事前に確認をしておくと良いでしょう。
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生活相談員(ソーシャルワーカー)に向いている人はどんな人?
ここまで、生活相談員の仕事内容や、やりがい、大変な点について挙げてきました。
やりがいと大変な点が、表裏一体であったりする為、考え方次第でプラスにもマイナスにもなってしまうところがあります。
それでは、具体的にどのような人が生活相談員に向いているでしょうか。仕事ぶりや、人間性であったり、どんな事に注意したら良いか等、主な4点について述べていきたいと思います。

- コミュニケーション力の高い人
- 困っている人を放っておかない人
- 観察力があり、客観視できる人
- 日勤帯を希望する人
連絡や調整をする際に、コミュニケーション能力は非常に大切なポイントです。忙しい業務の為、ここに躊躇している時間はありません。
家族やケアマネジャーからの連絡を現場に伝達する際も同様です。TEL等で済む内容であれば、すぐ行なって次の業務にコマを進められるような人が向いているかもしれません。
それから、困っている人を放っておかないという点も大事なポイントです。介護の仕事は福祉の仕事。福祉の精神で損得勘定関係無く行なう事が、成功に導くポイントとなるはずです。
そして、観察力や客観視できる事も大事な点です。細かな事でもいずれ大きな成功、または大きな失敗にも繋がり兼ねない為、それを見極める観察力が必要です。
また、利用者側からの意向と現場サイドがその意向に対して対応出来るかを検討する際等にも、どちらかの意見に偏らず、客観視して判断出来る力も必要です。
最後に、生活相談員は介護士等と違い、主に日勤帯の勤務です。育児等家庭の都合で夜勤を出来ない人におすすめの職種で、これも大事なポイントとなります。
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4)生活相談員(ソーシャルワーカー)になるためには
生活相談員は資格名ではなく、職種の呼び名です。
生活相談員(ソーシャルワーカー)になる為には以下の通り、指定の資格や条件が必要になってきます。

- 社会福祉士
- 社会福祉主事任用資格
- 精神保健福祉士
- 同等の能力を有すると認められる者(介護福祉士、介護支援専門員等)
国家資格である『社会福祉士』や『精神保健福祉士』、大学や短期大学において厚生労働大臣が指定する科目の中から3科目以上履修して卒業した場合に取得できる『社会福祉主事任用資格』を所持していれば、相談員業務が未経験でも生活相談員として就くことは可能です。
ただし、実務未経験で雇用してもらえるかどうかは、各事業所に確認をしましょう。
4つ目の『同等の能力を有すると認められる者』について、『社会福祉士』、『精神保健福祉士』、に並ぶ三大福祉士でもある『介護福祉士』や、民間資格でありながら国家資格レベルとも言われている『介護支援専門員』の資格を所持していれば、生活相談員になれることがあります。
また、2年以上の介護職経験がある者は生活相談員として認めているケース等、各自治体によって取り決めが違ってくる為、この4つ目は確認が必要です。
介護現場の経験が無いと様々な場面での適切な判断が難しく、業務の連絡・調整が上手くいかなくなることもあります。
介護現場の経験を経て、その大変さも理解した上で、生活相談員に就くことがスキルアップとして望ましいかもしれませんが、業務の幅によって、そこまでは必要ない事業所もあるかと思われます。そのあたりも、各事業所へ事前に確認すると良いでしょう。
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まとめ)資格や経験を活かしスキルアップ!目指せ生活相談員(ソーシャルワーカー)

生活相談員(ソーシャルワーカー)について、理解が深められ、スッキリすることが出来ましたでしょうか。
その業務は、契約から始まり、サービス担当者会議への出席、個別援助計画書の作成、利用者・家族やケアマネジャーとの連絡・調整・相談、その他の雑務と、様々な業務にマルチに携わります。
やりがいがあり、大変な事もありますが、それは考え方一つで、自身の糧となります。仕事柄、突発的な業務が入る事も多く、計画的に行なう事が難しい部分もありますが、スピーディーかつ正確に業務を行なうことで、1つずつクリアしていけることでしょう。
生活相談員になる為には、指定の資格や条件が必要になりますので、まずは資格取得と現場経験を積んで、スキルアップとして目指してみては、いかがでしょうか。