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2024年、これからの「リーダーシップ」について、考えてみよう

[最終更新日]2024/03/14

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これからの「リーダーシップ」のあり方について

「リーダーシップ」。──仕事をしていると、とてもよく聞く言葉です。
そして2024年現在において、世の中はこれまでより一層リーダーシップを執る人が求められているように感じます。

一方で、「リーダーシップを取るであったり、率先して行動するであったりが苦手」という人も少なくないでしょう。または、「これまでリーダー職・管理職として働いてきたが、最近になってリーダーシップの取り方について悩むようになった」という人もいるかもしれません。

もしあなたがリーダーシップを適切かつ効果的に発揮していくとしたら、まず「リーダーシップ」という概念自体への理解を深めることが重要だと、私は思います。

この記事では、リーダーシップの役割と、これまでの世の中でリーダーシップがどう解釈され、そして実践されてきたか、そしてこれから求められるであろうリーダーシップのあり方について、お話していきます。

目次

リーダーシップとは

まず、私たちが「リーダーシップを取る」という行為をどう定義すると良いかについて、考えてみましょう。

辞典やインターネット検索では、「リーダーシップを取る=指導する、主導権・統率力を持つ」といった意味合いで紹介されることが多いですが、もう少しかみ砕いていうと、「望ましい状態の実現に向けて、他者に働きかけること」と表現できるでしょう。

 リーダーシップとは  望ましい状態の実現に向けて、他者に働きかけること

「望ましい状態」とは、会社組織でいえば「(直近の)目標」や「ミッション」、「ビジョン」などが挙げられます。または、近しい人たちに向けて「業務をより効率化していくこと」であったり、「チームワークを活性していくこと」「信頼関係を構築していくこと」といった他者に対して働きかける行為も、リーダーシップといえます。

また、リーダーシップは単独的な行為ではなく、必ず「他者(他人)」に関わることが前提となる点を押さえておくべきでしょう。
他者への意識・関心なしにリーダーシップは起こしえません。

では、そのリーダーシップを発揮するために、何が求められるのか──。
このような議論は、実に2,000年以上も昔からされてきました。なぜそんなに長い年月をかけているのかというと、リーダーシップは世の中や環境の推移や変化に合わせて捉え方を再定義(アップデート)していく必要があったからでしょう。

そこで続いては、これまでリーダーシップがどのような捉え方・解釈をされてきたのか、その変遷についてお話します。

Phase1 「リーダーとしての【資質】があるか、それが重要だ。」と言われた時代

リーダーシップ特性論(紀元前400年頃~1940年頃)

紀元前400年頃~1940年頃までのリーダーシップは、「人のあり方(資質)」を重要視

リーダーシップの概念は、紀元前500年頃にはすでに存在していました。

例えば、中国春愁時代の思想家 孔子は「徳のある統治者がその持ち前の徳をもって人民を治めるべき」と訴え(徳治政治)、古代ギリシアの哲学者プラトン(Platon 前427~前347)は、自身の主著「国家論」で「国を治めるのは、徳のある哲人が行うべきだ」という「哲人政治」を主張しています。

これら指導者たちが伝えるリーダーシップ像に共通してみられるのが、「リーダー(指導者)は『徳』を持っているべきである」という考え方です。

つまり、リーダーシップを発揮するためには、徳の深さという「資質」が求められるということですね。そして、この考え方は「リーダーシップ特性論」といわれ、その後の時代にも受け継がれていくことになります。

ただし、求められる資質自体については、時代の変遷に伴い変化していきました。
イタリア、ルネサンス期の政治思想家 マキャベリ(1469~1527)は、「君主論」でリーダーに求められる資質の一つに「したたかさ」や「権力を誇示すること」を挙げています。

また、19世紀に入ってからはイギリスの歴史家トーマス・カーライル(1795~1881)が主著「英雄崇拝論」にて、英雄(リーダー)の条件として「その目つきが事物の仮象を見抜き、事物そのものを見抜く誠実さ」があるとしました。

その後、20世紀に入りアメリカの心理学者ストッグディルが自らの研究をもとに、リーダーのもつ資質として「公正」「正直」「誠実」「思慮深さ」「公平」「機敏」「独創性」「忍耐」「自信」「攻撃性」「適応性」「ユーモアの感覚」「社交性」「頼もしさ」の14の特性を挙げました。

リーダーシップを発揮するためには、本当に資質が必要?

さて、ここで一度ひと息ついてみましょう。

リーダーシップを発揮するためには、果たして本当に『徳』のような資質が必要なのでしょうか。
そして、時代と共に異なる主張をする人物が登場したのはなぜでしょう。

立場が人を創る」という言葉がある通り、まったくリーダータイプに見えなかった人が、リーダーの立場になって行動が変容するというのはよく聞く話です。「資質を持った人のみが、リーダーシップを発揮できる」という考えは、いささか極論かもしれません。

また、その資質自体についても、「あるなしを、どう測って判断すればよいのか」という問題も残ります。
例えばストッグディルが挙げた「公正」、「正直」、「誠実」、「思慮深さ」などについては、「この人はこれだけ持っているからリーダーになれる」ということをどこまで測れるのでしょうか。
おそらく、計測することは不可能だと思います。

事実、ストッグディルはその後の研究で、自身が挙げた「それぞれの特性とリーダーシップ発揮との間に、はっきりとした因果関係を見出せなくなった」とし、「リーダーシップ特性論には限界がある」と宣言しました。

実際にリーダーシップを発揮する人物がいたときに、「必ずしもこれら資質が備わっているとは限らない」ことが多く確認されたのです。

リーダーシップの研究自体はその後も多くの人によって継続されますが、リーダーシップ特性論を支持する人は次第に少数派になっていきます。

Phase2 「リーダーシップは、その人の【行動】で決まる」と言われた時代

リーダーシップ行動論(1940年頃~1960年頃)

1940年頃~1960年頃までのリーダーシップは、「その人の行動」を重要視

リーダーシップ特性論が影を潜めて、代わりに主流となった考え方が「リーダーシップ行動論」でした。
リーダーシップ行動論とは、「優れたリーダーシップは持って生まれた資質によるものではなく、行動によって発揮される」という考え方です。

代表的な考え方に、日本の社会心理学者 三隅二不二が1966年に提唱した「PM理論」とアメリカの経営コンサルタントのブレイク(R.R. Blake)とムートン(J.S. Mouton)が1964年に提唱した「マネジリアルグリッド論」があります。

PM理論

PM理論とはリーダーシップを「課題達成への行動」と「人間関係・集団維持への行動」の2つに分け、各行動とその結果の強弱で判断するものです。

PM理論

図中の右上の「PM」位置(両方とも大文字になっている箇所)に達している状態において、一番望ましいリーダーシップが発揮されるという考えです。

マネジリアルグリッド論

マネジリアルグリッド論もPM理論とよく似た考え方です。
こちらは、「人への関心度」と「業務への関心度」をそれぞれ縦軸・横軸の1~9段階のレベルで分け、対象となる人をプロット(位置づけ)します。

マネジリアルグリッド論

位置づけされた場所によって、その人のリーダーとしての特性・適性を判断するというのが、このマネジリアルグリッド論です。

タイプ 業務への関心度 人への関心度
無関心型 低い 低い
権威服従型 高い 低い
カントリークラブ型 低い 高い
組織人間型 一定ある 一定ある
チーム管理型 高い 高い

上の表では、「チーム管理型」のタイプに当たる人が、「リーダーとして適性がある」ことになります。

「リーダーシップ行動論」は、本当に有効な理論か

PM理論とマネジリアルグリッド論では、どちらも「共に働く人への意識・働きかけ」と「業務への意識・働きかけ」を評価軸にしている点でとても良く似ており、かつ「その人の行動でリーダーの適性を判断する」という点も共通しています。
評価をする際の観点としても、納得度の高い理論と言えるかもしれません。

ですが、これらPM理論とマネジリアルグリッド論においても、現在では有効なリーダーシップ論として支持する人はそこまで多くありません。

その理由は、実際にリーダーシップが問われるシーンでは、様々な環境(外的要因)があり、リーダーシップ行動論で挙げられるような行動・能力を強化すれば必ずうまく行くとは断言できないからです。

このことは、実際の業務シーンを想像してみるとイメージが付きやすいでしょう。
例えば、売上向上を急務としている会社・組織でリーダーシップを発揮する際に、PM理論やマネジリアルグリッド論で挙げたような行動特性を強化しただけでうまく行くかというと、そうとは限りませんよね。

リーダーシップ行動論は、「リーダーとして活動する際の必須要件」の説明としては妥当でかつ解りやすいのですが、市場やテクノロジーの変化、その他ステークホルダーからの影響などに対応したリーダーシップを取るためには、それだけでは足りないのです。

Phase3 「【環境や条件】によって、取るべきリーダーシップは変わる」と言われた時代

リーダーシップ条件適応論(1960年頃~1980年頃)

1960年頃~1980年頃までのリーダーシップは、「条件や環境に合わせての働きかけ」を重要視

ここまで紹介した「リーダーシップ特性論」や「リーダーシップ行動論」は、いわば「どんな状況においても発揮できるリーダーシップとはどのようなものか」への探求であったと言えるでしょう。

ですが、そもそも「どんな状況」にも適応する普遍的なリーダーシップのあり方など存在するのでしょうか。そもそもリーダーシップとは、環境や状況によってその在り方自体も変化していかなくてはならないものなのかもしれません。

──そして、そのような考えのもと発展したのが「リーダーシップ条件適応論」です。

リーダーシップ条件適応理論は、1960年代の終わり頃から注目されたリーダーシップ論の1つです。
全ての状況に適応される普遍的なリーダーシップ・スタイルというものは存在しない。状況に合わせて、それぞれ異なったリーダーシップスタイルを選択する必要がある」というのが、この理論の考え方の軸となっています。

リーダーシップ条件適応理論の代表的な理論としては、フィドラー理論、パス・ゴール理論、SL理論があります。ここでは、フィドラー理論とパス・ゴール理論について紹介しましょう。

フィドラー理論

フィドラー理論では、リーダーシップのタイプを「仕事思考型」と「人間関係志向型」の2つに分けて、それぞれどういった環境時にパフォーマンスを発揮しやすいかを説明しています。

環境の分類としては、「上司と部下の関係(良い⇔悪い)」・「業務内容(シンプル⇔複雑)」・「当事者の権限(強い⇔弱い)」があります。

以下の図は、フィドラー理論において「それぞれの環境の組み合わせで仕事志向と人間関係志向どちらを優先すべきか」を示したものです。

フィドラー理論

フィドラー理論のポイントは、「仕事志向と人間関係志向について、安易に『どちらも大切なもの』と片づけるのではなく、環境に応じてその働きかけを強めたり弱めたりする必要がある」という主張があることです。

パス・ゴール理論

続いてはパス・ゴール理論を見ていきましょう。
こちらの理論では、リーダーの行動タイプを「指示型・支援型・参加型・達成志向型」と4つに分け、それぞれどういった環境・状況時に有効になるかを示しています。

リーダー行動 内容 どのような条件下で効果的か
指示型 与えられた課題を達成する方法や工程を具合的に教える
  • 業務フローがあいまいなとき
  • チーム内の関係性が形成途中であるとき
  • 部下の経験値や自律性が高くないとき
支援型 部下の状態に気遣い・配慮を示す
  • 業務フローが明確にあるとき
  • リーダー・部下間の役割分担が明確にあるとき
参加型 決定を下す前に部下に意見を求め、参加する
  • 部下の経験値や自律性が高いとき
  • 部下との関係性が良好なとき
達成志向型 高い目標を示し、部下に努力を求める
  • 部下の経験値や自律性、および自己解決意欲が高いとき

出典:スティーブン・P・ロビンス 『[新版]組織行動のマネジメント』 ダイヤモンド社の内容をもとに、一部弊社加筆

リーダーは4つのタイプの行動を、その組織・チームの「環境条件」および「関わる部下の特性」をもとに選択し、行動する──というのが、パス・ゴール理論の考えです。

パス・ゴール理論

「環境や状況に合わせて、リーダーシップのあり方は変わる」と、心からそう思えるか。

フィドラー理論やパス・ゴール理論の「リーダーシップ条件適応論」に見られる「環境や状況に合わせて、リーダーシップのあり方は変わる」という考えは、非常に適切だと私は思います。

一方で、これまでのリーダーシップ論が「リーダーとしての人間性」を重視していたのに対して、これら理論はリーダーシップの主目的を「結果や業績(パフォーマンス)の向上」とする傾向が強まっています。

私たちは、リーダーに対して心のどこかで「リーダーとしての人間性や資質」を期待していることも多いでしょう。対しての条件適応論でとなえるリーダーシップ論はその点についてはあまり触れていません。

例えば、フィドラー理論にあった「特定の環境下では、人間関係志向型のリーダーシップはパフォーマンスが悪くなる」という主張に不協和音のようなものを感じた人もいるのではないでしょうか。

つまり、頭ではわかっていても、心のほうは付いて行かないこともある──、リーダーシップ条件適応論には、そんなもどかしさもあるように感じられます。

Phase4 「時代の変化に合わせ、自らも変化していくことを模索する」時代

現代の様々なリーダーシップ理論(コンセプト理論 1980年頃~現代)

1980年頃~現代でのリーダーシップは、「時代の変化に合わせ、自らも変化していくこと」を重要視

ようやく現代の時代にやってきました。
現代においては、先に紹介したリーダーシップ条件適応論を発展しての「新たなリーダーシップ理論」が数多くあります。

これまでの時代のリーダーシップ理論との大きな違いは、その「多様性」です。
ここでは、代表的なものを紹介します。

変革型リーダーシップ

変革型リーダーシップ:時代や環境の変化に合わせて、「自分たちも変化・変革していこう」という考えと行動に基いたリーダーシップ理論

社会情勢・市場の変化や技術革新のスピードの高まりに伴い、企業リーダーたちが募らせた危機感や「環境変化に合わせて自分たちも変革していく」ことへの必要性から育まれたリーダーシップ理論が、「変革型リーダーシップ」です。

変革型リーダーシップは、組織が経営危機などに瀕して、まさに「変わらなければならない」状況下で発揮されやすいといいます。

例えば、「アメーバ経営」と呼ばれる経営手法で経営破綻状態だった日本航空をたった2年でV字回復させた稲森和夫氏や、「日産リバイバル・プラン」と銘打って苛烈なコストカットを行いつつも世間をあっと驚かせるその後の回復と成長を実現したカルロス・ゴーン氏をイメージすると良いかもしれません。

変革型リーダーシップを発揮していく為には、以下のIから始まる4つの要素が必要といいます。

4つのI 説明
Individualixed influence
理想化による影響
自身の理想で人を惹きつける、カリスマ性
ビジョン及び使命の意味を提供する
Inspirational motivation
モチベーションの鼓舞
部下の感情や前向きな気持ちを喚起させる
Intellectual stimulation
知的刺激
部下の関心や好奇心、その他思考力や想像力を喚起させ、考えや価値観に影響を与える
Individual consideration
個別の配慮
部下ひとりひとりをここに扱い、コーチし、アドバイスする

参考:Bass & Avolio(1994)の提唱する、「変革型リーダーシップの4つのI」の内容を、一部弊社加筆

現代社会においては、これまで発展と繫栄を続けていた大企業でもあっても、様々な要因に伴い急激な業績不振にしまうケースが多く見られています。

自組織・チームに対して「現状のままでは、淘汰されてしまう」という危機感を持っている人も多いでしょう。そのような中で、力強いビジョンと推進力を持って現状を打破し、その「変革能力」を重視するのが、変革型リーダーシップです。

サーバント・リーダーシップ

サーバント・リーダーシップ:「リーダーはまず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」という考えに基づいたリーダーシップ理論

サーバント・リーダーシップとは、アメリカのロバート・K・グリーンリーフが提唱した「リーダーは、まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」という考えに基づいた、周囲の人々との信頼関係を重視したリーダーシップ理論です。

グリーンリーフが活動していた当時(1970年代)のアメリカでは、ベトナム戦争の泥沼化、ウォーターゲート事件の勃発、そして長らく続いた市場成長の鈍化に伴い、人々は国や社会のリーダー層に不信感を募らせていました。

そのような背景を受け、グリーンリーフは従来の権威性の色濃いリーダーシップではなく、真に人々が望む素晴らしい状態(社会や環境)を実現するために、「共に行動できる」リーダーが大切だと考え、この理論を打ち立てたのです。

その後、現代の「個人の多様な生き方や考え方」を重視する風潮の高まりに合わせて、人々の多様な価値観を重視するサーバント・リーダーシップを支持する人は増えています。

NPO法人「日本サーバント・リーダーシップ協会」によると、サーバント・リーダーシップを発揮するためには以下の10の特性が重要といいます。

傾聴 「耳」「目」「心」を傾けて真摯な姿勢で相手の話を聴くコミュニケーションの技法。
共感 他人の考え・主張を受けとめ、喜怒哀楽の感情を共有すること。
癒やし 様々な理由で意気消沈したり傷ついた人をいたわり心を癒す行為。
気づき 固定観念や偏見にとらわれず、物事をありのままに見て、その本質を見る能力。
説得 一方的に従わせるのではなく、相手の理解を得て仕事をしてもらうようコミュニケーションを取ること。
概念化 環境や状況、起きた出来事の背景にある性質や要素に着目して、それらの事物を一つの概念(コンセプト)のもとに「統合」すること。
先見力 過去の事例や一般概念をもとに、未来を見通していく力。
執事役 自分が利益を得ることよりも、相手に利益を与えることに喜びを感じるようにしたり、相手から一歩引くことを心得る能力。
人々の成長に関わる 関わる人たちの資質や特性に注目し、それらに合わせての成長のあり方をイメージし、かつ寄与していくこと。
コミュニティづくり 関わる人たちが安心感や愛着を持てる環境を構築し、それぞれが成長感と幸福感を持てるコミュニティにしていくこと。

オーセンティック・リーダーシップ

オーセンティック・リーダーシップ:「誰もが『自分らしさ』を発揮したリーダーになれる」という考えに基づいたリーダーシップ理論

オーセンティック・リーダーシップとは、「オーセンティック(authentic:本物の、確実な、真正な)」の言葉にあるように、「自分らしさ」「真の自己」を軸に、自分自身の価値観や信念に基づいたリーダーシップを大切にする理論です。

オーセンティック・リーダーシップは比較的新しいリーダーシップ理論で、2005年頃から多くの経営リーダーに注目され始めました。

これまでのリーダーシップ理論ではリーダーが持つべき価値観について特定するものが多かったですが、オーセンティック・リーダーシップではその価値観を「その人自身」に委ねます。──これまでのリーダーシップ論と大きく主張が異なっているのが分かるでしょう。

そもそも、リーダーシップは「望ましい状態の実現に向けて、他者に働きかけること」をいいますが、実現するためにはその思想・価値観において他者からの共感が不可欠でしょう。

一方で思想・価値観とは人によって千差万別であり、旧世代の「リーダーシップ特性論」では「こうあるべき」といった画一的な徳や資質に落とし込むリーダーシップ手法はあまりうまくいかないことが多いことが明らかになっています。

それら「どちらかを立てれば、片方が立ち行かなくなる」ような課題に応えるべく、リーダーが持つべき思想・価値観を自分の内側に求めていこうとするのが、オーセンティック・リーダーシップです。

オーセンティック・リーダーシップの基本的な考え方のひとつに、「誰もが自分らしさを発揮し、リーダーとなれる」というものがあります。

また、その際は以下の5つの特性が求められるといいます。

オーセンティック・リーダーシップに求められる、5つの特性
オーセンティック・リーダーシップに求められる、5つの特性:目的、価値観、人間関係、自己統制、真心

「オーセンティック・リーダーシップは誰でも発揮できる」といいましたが、その一方で発揮するためには相応の資質・働きかけが求められることが上記図からうかがえます。

ただし、ここで挙げた特性はリーダーシップ云々に関わらず、多くの人にとって「自身が成長させたいと思っている要素」に重ねられるのではないでしょうか。

つまり、オーセンティック・リーダーシップとはリーダーとして活躍するために「自分ではない誰か」になるのではなく、「自分が真にありたい姿」を求めていく行為にも重ねられる理論といえるでしょう。

シェアド・リーダーシップ

シェアド・リーダーシップ:「個々人の強みを大切にし、皆がリーダーになり、同時に皆がフォロワーになる」というリーダーシップ理論

シェアド・リーダーシップとは、リーダーを特定の人に縛ることなく、複数のメンバーまたは全員でリーダーシップを執るという、リーダーシップ理論です。

振り返ってみると、「職場で活躍する人」とは実に多様であることが確認できます。
例えば営業チームで高い売上目標を掲げられた際には行動力や提案力に秀でた人が活躍するかもしれませんし、企画立案の際には最初にアイデア力がある人が活躍して、その後は計画的かつ論理的に(そしてときに地道に)アイデアを形にする人が活躍することが多いでしょう。

そのほか、スキルアップに伸び悩む後輩を育成・フォローする人や、意見がまとまらないチームをまとめたり協調性を促す人など、発揮される資質や特性は様々です。

そして、どの行為も(見ようによって)「リーダーシップを発揮している」と言うことができます。
そういった個々人の強みや特性が発揮されるシーンを大切にし、皆がリーダーになり、同時に皆がフォロワーになる組織・チームを育んでいくのが、シェアド・リーダーシップです。

シェアド・リーダーシップと従来型のリーダーシップの違い

シェアド・リーダーシップは「(その環境が適えば)誰もがリーダーシップを発揮できる」という考えに基づいており、その点は前述のオーセンティック・リーダーシップとも共通しています。

また、これまでのリーダーシップ理論はリーダーとなる個人の在り方にフォーカスされてきましたが、シェアド・リーダーシップは個人ではなく組織(環境)の在り方にフォーカスしている点にも注目すべきでしょう。

シェアド・リーダーシップを発揮できる組織にしていくためには、以下の要素が必要になるといいます。

シェアド・リーダーシップ型組織に求められる要素
  • ①目的の共有化
    …関わる人たちが、共通する目標に向けて協調・連携している状態にしていくこと
  • ②ひとりひとりの自己効力感を促す環境
    …関わる人たちが、自分の仕事をうまくこなし、目標を達成することに対して自信を持てるよう働きかけられる環境にしていく
  • ③価値観の多様性を受け入れ、相互信頼を促す働きかけ
    …職場・チーム内で各人が持つ様々な価値観を受け入れ、かつ互いに信頼しえるコミュニケーションを活性していく

参考:著書「シェアド・リーダーシップ-チーム全員の影響力が職場を強くする」(石川淳)の内容をもとに、筆者作成

シェアド・リーダーシップは組織的な働きかけが不可欠ですが、個人レベルで目指せないのかというと、そのようなことはありません。

例えばある人とペアで業務を行う際に、相手の長所や強みに合わせて作業分担をしたり、チームリーダーが部下の適性に合わせてそれぞれ任せる分野を設けたり、その際に自身がフォロワーに回って相手のリーダーシップを発揮させること(またはその逆を促すこと)は、シェアド・リーダーシップ的な働きかけと言えるでしょう。

ポイントは、「個(人)の発揮」よりも「発揮できる環境を整えること」を意識することです。
シェアド・リーダーシップでは、このような俯瞰的な視点が不可欠になります。

現代のリーダーシップ理論は、どこに向かっていくのか?

現代のリーダーシップ理論として「変革型リーダーシップ理論」、「サーバント・リーダーシップ」、「オーセンティック・リーダーシップ」、そして「シェアド・リーダーシップ」についてお話しました。

これまでの時代のリーダーシップ理論と比べて、提唱される定義や考えに多様・多彩さを感じたのではないでしょうか。

現代のリーダーシップ理論の多くは概念的な要素を重視するものが多いことから、それらをまとめて「コンセプト理論」と言われることもあります。ですが、その概念自体も様々ですので、これら理論を一括りにして「こういうものだ」と示すのは難しいかもしれません。

また、現代のリーダーシップ理論は、過去の理論と比べて「その理論は、心に響くか(本心から、納得・共感できるか)」を大切にしているようにも感じられます。

見ようによっては、リーダーシップ理論は時代の変遷や環境変化に合わせてアップデートされ続けてきつつ、その一方で現代のリーダーシップ理論は、古代から近代のリーダーシップ特性論に色濃くあった「その人(または組織)の在り方」を重視する流れに回帰されてきているのかもしれません。

リーダーシップの歴史 まとめ

ここまで、リーダーシップの歴史についてお話しました。

一気に読まれた方は、もしかしたら情報量の多さに整理しきれないところもあったかもしれません。

ここまでの流れを、ざっとまとめてみましょう。

  • ①1940年頃まで、リーダーシップを発揮するには、「その人の資質が大切」だといわれていた
    →リーダーシップ特性論(紀元前400年頃~1940年頃)
  • ②その後、リーダーシップは「資質」よりも「取るべき行動自体が重要」だといわれるようになった
    →リーダーシップ行動論(1940年頃~1960年頃)
  • ③リーダーシップを発揮するための行動は、「環境・条件に合わせて変化・適応させることが大切」という考えが主流になった
    →リーダーシップ条件適応論(1960年頃~1980年頃)
  • ④絶えず変化し複雑性と不確実性の増す現代社会においてに対応しうるリーダーシップの在り方について、「継続的な変化に柔軟に対応しつつ、周囲からの理解・共感も得られていること」が求められるようになった
    →現代の様々なリーダーシップ理論(コンセプト理論 1980年頃~現代)

現代のリーダーシップにおいては、「変化に適応し、自身(自組織・自チーム)も変化していける」ことが前提条件のひとつとなっています。そのうえで、関わる人たちが「共感」できるかどうかが、そのリーダーシップ発揮の如何に関わってくるのでしょう。

2023年以降、リーダーシップの在り方は

さて、ここからは本題として、2024年以降、どのようなリーダーシップが求められるようになるかについて、お話したいと思います。

ここまでお伝えした通り、求められるリーダーシップの在り方はその環境・状況によって変化します。
ただし、これで話を終わらせてしまっては「結局、リーダーシップどう発揮すれば良いの?」という疑問を解消されないままになってしまうと思いますので、「(全部の条件には当てはまらないにしても、)これからの世の中で、多くの環境・状況で求められるであろうリーダーシップ」について、私の考えをお伝えします。

キーワードは、「生産性向上」と「共感」、そして「想像力」です。

「生産性向上」とリーダーシップの関係について

生産性とは仕事の「効率の程度」をあらわすもの。

2024年現在、国内の景況は芳しくありません。
近年の少子化問題やそれに伴う労働人口や消費者支出減少の問題もあり、加えて2020年からの新型コロナウイルスによるパンデミックもあって、多くの人・企業が困難な状況に立たされています。

直近では、内閣府・財務省が行う「法人企業景気予測調査」の2021年1~3月期において、国内の大企業・中堅企業・中小企業それぞれ「景況は下降する」という見通しを立てている企業が過半数以上あることがわかりました。※

※参考:内閣府・財務省「法人企業景気予測調査(令和3年1~3月期調査)」

こうした諸状況を改善して行くために、国と多くの企業が「生産性向上」というキーワードを掲げて試行錯誤を続けているのはご存じのとおりです。

参考:生産性向上に向けての稼働時間改善のイメージ(厚生労働省)

生産性向上に向けての稼働時間改善のイメージ

引用元:厚生労働省「生産性&効率アップ必勝マニュアル」より

生産性向上の取り組みの一環として、国内では2019年4月から「働き方改革関連法」が順次施行されています。
テレビやインターネットのメディアでは改革の一手である「長時間労働(時間外労働)の是正」に関するニュースが毎日のように取り上げられるようになりましたが、「生産性向上」に関するニュースは(時々は見受けられるものの)それほど多く感じません。

恐らく、「生産性向上に向けて取り組んではいるが、思うような効果が出ていない」という組織・チームの方が圧倒的に多いのでしょう。

ですが、「効果が出ない」ままでいれば、たとえ大企業であっても近い未来には淘汰されてしまう、──今はそんな時代でもあります。
企業、そして自分たち自身がこれから先も活動を続けていけるために、「生産性向上」に対するニーズは更に高まっていくことは想像に難くありません。

「生産性を高める=業務効率化」ではない

「生産性(労働生産性)」とは、通常「労働者1人あたりが生み出す成果」、あるいは「時間あたりに生み出す成果」のことを指します。

この意味通りに捉えると、リーダーシップ条件適応論で紹介したような「フィドラー理論」や「パス・ゴール理論」のような、パフォーマンスや業績向上を主目標としたリーダーシップ論が効果を出しやすいと見られるかもしれません。

ですが、恐らくそれら理論に則った取り組みだけでうまく行くケースはそれほど多くないでしょう。

その理由とは、「生産性の向上」とは「業務効率化」だけを指すのではなく、新たな利益を生み出すための「付加価値的業務」、つまりこれまでやってこなかった新しい取り組み(イノベーション的な業務)も求められるということです。

生産性向上に向けての稼働時間改善のイメージ

つまり、業務効率化とイノベーション的な取り組み、この2つをバランスよく考え実践していくための働きかけが、現代のリーダーシップに求められるのです。

イノベーション的な取り組みとは、「組織において、実施するために必要なノウハウ・事例が無いまたは乏しく、一定数の試み、試行錯誤、集団的ブレーンストーミングが不可欠な業務」を指します。

イノベーション的な取り組みに必要とされる要素と起こりうるリスク
必要とされる要素
  • 組織的な学習・リサーチとスキル・ノウハウの蓄積
  • 試行錯誤の繰り返し
  • 集団的ブレーンストーミング
起こりうるリスク
  • 投資コストの増大
  • 競合との速度勝負(時間的な制約)
  • 関係者及び周囲の「失敗への恐れ」
  • 経過時間と共に発生する、関係者の業務モチベーション低下

イノベーション的な取り組みでの具体的な例として、「デジタル化への取り組み(DX事業)」があるでしょう。
近年の様々なクラウドサービスの登場や、AIやビッグデータ分野での技術革新によって、多くの企業で恒常的なデジタル化への取り組みが求められるようになりました。

たとえ自分がそれら分野に疎かったとしても、リーダー的立場の人は取り組みに積極的に関与することが期待されるはずです。「自分は専門外だから」と敬遠していてはリーダーシップの発揮は難しいでしょう。

「共感」とリーダーシップの関係について

共感とは心の中で他者と自分を融合する心理

続いては、これまで文中にも何度か登場した、「共感」というキーワードについて見ていきましょう。

共感とは、「心の中で他者と自分を融合する心理」と説明できます。
リーダーシップで発生される共感とは、「自身のリーダーシップ(ビジョン実現に向けての想いなど)を、周囲の人たちの心の中にも住まわせる」と言うこともできるでしょう。

組織・チームの存在理由とは、「一人では成し遂げられないことを実現する」ことにあります。
そして、リーダーへの共感を持った組織・チームの働きかけは、そうでない組織・チームの働きかけと比べて強固になることは言うまでもありません。

現代の「コンセプト理論」で挙げられたリーダーシップ論(変革型リーダーシップ、サーバント・リーダーシップ、オーセンティック・リーダーシップ、シェアド・リーダーシップ)のどれもが、共感への働きかけを重要視しています。

「(組織・チームは)変化し続けなければ、淘汰される」と言われ続けている現代社会において、リーダーたる人がパフォーマンスを発揮していくうえで「周囲の共感を得られること」は必須要件でしょう。

「想像力」とリーダーシップの関係について

想像力とは誰かを思い遣る + 未来を思い描く

最後に、「想像力」というキーワードについて、これまで登場した生産性向上・共感というワードとも照らし合わせつつ見ていきましょう。

そもそも想像力とは、「すべての行動の出発点」になるものです。

たとえば生産性向上(業務効率化+新たな価値創造)への取り組みは、「自分たちは、これからどう変わりたいのか」という想像力(=ビジョン)を持つことが不可欠です。

そして、周囲の共感を得るための働きかけにおいても、「相手への関心」を持つこと、そしてそのための想像力を持っていなければ、そもそも人はついてこないでしょう。

この変化の激しい世の中で、数年先の見通しを立てるのがどんどん難しくなってきているだけでなく、少なくない人たちがいま現在の自分たちの環境・状況に対して閉塞感を持っています。
誰だって、「これから先、大変なことばかりだね」という人よりも、「これから先、こういう未来を実現したいんだけど、一緒にやっていかない?」という人と、「一緒に仕事したい」と感じるのではないでしょうか。

近年、ワードとして取り上げられることの多くなった「SDGs」や「サステナビリティ」においても、大切なことは「未来への想像力」を持つことです。

私は、「自分と周囲の人たちにとっての、まだ実現していない望ましい未来」を思い描き、ポジティブに行動していくための想像力こそが、これからのリーダーシップで最も求められる要素になっていくと思います。

まとめ)リーダーシップを形成する大部分は「人としての想い」

リーダーシップを形成する大部分は「人としての想い」

ここまで、リーダーシップの歴史と、2024年以降のリーダーシップのあり方についてお伝えしました。

後半は私の見解が多分に含まれていますので、いちど「あなた自身が、この記事を読んでどう思ったか」を振り返ってみて、その想いをもとにあなた自身が考える「望ましいリーダーシップ」を描いてみてください。

日本の実業家であり、ホンダの創始者である本田宗一郎さんは、以下の科白を残しています。

人を動かすことのできる人は、他人の気持ちになれる人である。その代わり、他人の気持ちになれる人というのは自分が悩む。自分が悩んだことのない人は、まず人を動かすことはできない。

いま現在、リーダーシップについて悩んでいるとしたら、その悩みも自分の「想い」の一部分なのでしょう。
そしてそれは、リーダーシップの発揮に必要な要素だと思います。

リーダーシップを形成する大部分は「人としての想い」です。
知識やスキルも大事ですが、それ以上に、あなた自身の想い、そして関わる周囲の人たちの想いを大切に扱いつつ、あなたならではのリーダーシップへのイメージを培っていくことを願います。

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