40代・50代の「経理」への需要は?ミドル・シニア層が転職で経理部を目指す際のポイント・注意点
[最終更新日]2023/03/17

現在、経理部で就業されている40〜50代の方の中には、さらなるステップアップを目指して転職を検討されている方もいるはずです。
ひと昔前であれば、40〜50代の転職は容易ではないといわれてきました。
そのため、現在の年齢から新たな環境に適応できるのか、そもそも転職市場において需要があるのか、気になっている方も多いことでしょう。
目次
1)40代~50代ミドル・シニア人材の知識・経験を求める企業は多い

40〜50代の方は、「そもそもこの年齢層の人材を求める企業がどの程度あるのだろうか?」と疑問に感じたことが一度はあるでしょう。
人材採用大手のエン・ジャパン株式会社が実施した調査によれば、2019年の時点で79%の転職コンサルタントが50代以上の求人増加を実感しており、2020年には66%の転職コンサルタントが35歳以上のミドル求人が増加すると予測しています。
転職市場の最前線を知り尽くした転職コンサルタントがこのように感じているのですから、40〜50代の人材を求める企業が増加しているのはほぼ間違いないと考えられます。
40代~50代ミドル・シニア層の人材需要が高まっている背景には、少子高齢化に伴う若手人材の不足と、マネジメント人材の不足という2つの面があります。
労働人口の減少に伴い、20代など若手の人材を採用するのは大半の企業にとって困難な課題となっています。
加えて、現在の40〜50代は就職氷河期に新卒だった世代であり、当時は多くの企業が採用を抑制していた経緯があります。
マネジメント層が手薄になっている企業が、新たに40代~50代の人材を外部から迎え入れようと考えるケースが増加しているのです。
一方で、経理向け求人は全体母数の中では「かなり少なめ」
では、経理担当者に対象を絞った場合はどうでしょうか。一般的な転職サイトで求人を検索した場合、年齢を40代以上、職種を経理に指定して求人を探してもわずか数件のことが多いです。
40代以上を対象とした経理担当者の募集は求人そのものが希少であり、母数が少ないことが考えられます。
そのため、若手の人材のように転職サイトで求人を探し、自分で応募して採用に至るのは相当困難であることが予想されます。
参考:ミドル世代求人の発生イメージ

上の図は、40代~50代のミドル以上の世代を対象とした求人数のイメージです。
この年代の人材を求める企業の多くが、欠員募集など限られたケースで求人を出す傾向があります。
40〜50代が経理の求人を見つける際は、ピンポイントで空き枠を探すことになるため、転職エージェントに登録した上で中長期的に案件を待つ姿勢で転職活動を進めるのが現実的といえるでしょう。
2)企業が40代~50代ミドル・シニア人材に求める「経理の働き方」とは
求人の動向を知るのと同時に、企業が40〜50代の経理経験者に何を求めているのかを理解しておくことも重要です。
企業が期待する働き方・能力を満たしていれば、採用される確率を高めることができるでしょう。
実際に求人に応募し、採用選考に進む段階に入った際は、企業が求める資質・能力を集中的にアピールする上でも役立ちます。
企業が40代~50代ミドル・シニア人材に求める「経理の働き方」のポイントとして、次の3点が挙げられます。
- 組織の課題・不足点をカバーする「専門性」+「現場力」
- 組織と現場を繋げる「マネジメント力」
- 「デジタル化推進(DX推進)」への働きかけ
それぞれ詳しく見ていきましょう。
組織の課題・不足点をカバーする「専門性」+「現場力」

企業が40〜50代の人材を採用する場合、若手のようにじっくりと時間をかけて育成することは想定していないと考えたほうが得策でしょう。
即戦力として現場に投入することができ、かつこれまでの経験や専門性の高さを武器に成果を挙げていくことが求められています。
このとき必要とされるのが「専門性」と「現場力」です。
専門性とは、経理担当者としての豊富な実務経験を指します。
経理全般の基本的な業務知識はもちろんのこと、税務関連の知識や会計ソフトの扱いなど、経理担当者としての知識・スキルは間違いなく求められると考えてください。
現場力とは、経理実務の現場において発生しやすい不測の事態への対処や、トラブル対応に関わる資質・能力を指します。
企業は各社が課題や不足点を抱えています。経理業務の豊富な経験を元に組織が抱える課題をカバーし、粘り強く改善していくことのできる現場力は不可欠といえるでしょう。
組織と現場を繋げる「マネジメント力」

40〜50代の人材を中途採用する企業の多くが、近い将来、管理職への登用を見越して人材を募集していると考えられます。
管理職などの役職はもちろんのこと、現場を取りまとめた経験や人材育成の経験があれば重宝されるはずです。
マネジメント力をアピールするには、経理部が組織の中で果たすべき役割を俯瞰的に捉える視点が欠かせません。
経理に留まらず財務・会計の知識も併せ持ち、経営層と現場をつなげる立ち位置にあることを理解している必要があります。
また、実際に採用されて入社すれば、経理部の同僚に年下の社員が数多く在籍していることも考えられます。これまでに人材育成や指導に携わった経験があれば、評価される可能性があるでしょう。
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「デジタル化推進(DX推進)」への働きかけ

近年、DX推進を目指す企業が増えていますが、経理も多くの企業にとってデジタル化による業務効率化が強く求められている分野の1つといえます。
前職でクラウド会計ソフトやRPAの導入など、DX分野に携わった経験があれば高く評価される可能性があります。
DXを推進する上で障壁となりやすいのが、既存業務の整理と体系化です。
これまで担当者の経験則で処理されてきた経理業務をデジタル化するには、単純に新たなシステムを導入するだけでなく、従来の業務フローとの整合性を適切に見極めるための知見が不可欠です。
ミドル・シニア層の経理経験者でデジタルシフトの経験があれば、従来の業務フローとDX推進の過渡期を担う人材として、まさに適任といえるのです。
現職でDX推進の経験がなかったとしても、DXに関する知見を深めておくことは非常に重要です。
転職に限らず、今後のキャリアにおいても有益な知識となるはずですので、日頃から経理部門におけるDX推進の動向を注視しておきましょう。
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3)40代~50代が経理としての転職を実現する場合のポイント4点
ここまで、40〜50代の人材に対する企業からの需要と求められる働き方について解説してきました。
では、ミドル・シニア層が経理として転職する場合、具体的にどのようなことを意識したらいいのでしょうか。主なポイントとして、次の4点が挙げられます。
- 「焦りの転職」はNG。中長期的な転職活動を
- 「確実に価値発揮できる」と思える求人企業を探す
- 職務経歴書では「企業が求めるスキル・実績」、面接では「人柄」をPR
- ミドル・シニア層の転職支援に強い転職エージェントを活用しよう
じっくりと、中長期的な転職活動を。

前述の通り、ミドル・シニア層を対象とした経理担当者の求人は常時確保されているわけではなく、ピンポイントで発生する傾向があります。
「今すぐに転職したい」「早く次の職場に行きたい」といった焦りが出てしまうと、入社後に担当する仕事内容やポジションを熟慮しないまま「応募要件を満たしていた」という理由だけで転職先を決めてしまいがちです。
40〜50代の転職活動は、じっくりと中長期的な視点で進めるのが鉄則です。
半年・1年といったスパンで先を見据え、もし良い話があれば聞いてみるつもりで臨むのがよいでしょう。
若手の転職活動のように一度に大量の求人に応募し、反応が返ってきた企業の選考を受けるというスタイルではなく、自分に合った求人かどうかをよく見極めた上で応募することが大切です。
新しい「資格取得」が武器になることも
一般的に「資格を取得しただけでは転職で有利になるとは限らない」といわれることがありますが、ミドル・シニア層の転職に関しては例外も考えられます。
これまでに得た知識・経験を体系化しやすくなるほか、持っている知識の量・レベルを客観性のある指標として示すことができるからです。
また、資格取得に挑戦し、実際に取得に成功した事実があれば、新たな知識を吸収しようと努力する姿勢を評価されることもあるでしょう。
もしこれまでの経歴の中で経理担当者として差別化できそうな要素が薄いと感じるようなら、新たに資格を取得しておくことで武器になることもあり得ます。
もし気になっている資格があれば、この機会に挑戦してみるのも1つの考え方です。
40代~50代ミドル・シニアの経理転職で、役立てられる資格
簿記検定1~2級 | 日商簿記2級では、商業簿記、工業簿記を学習し、中小企業の経理実務を前提とした知識が習得します。 1級においては、極めて高度な商業簿記、工業簿記に加えて、複雑な会計学、原価計算を習得します。 |
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BATIC(国際会計検定) | BATIC(国際会計検定)は、英文会計資格のひとつです。国際会計スキル、簿記会計の知識と国際コミュニケーション能力を習得します。 外資系企業・グローバル企業、海外に取引先のある企業で重宝されることが多いです。 |
中小企業診断士 | 中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行うことを目的とした国家資格です財務・会計、運営、法務、人事と幅広い知識が求められます。 |
ビジネスマネージャー検定 | 管理職の心構えやチームの意義や働き方などマネジメントの基礎をはじめ、企業の事業計画やマーケティング、財務諸表の見方など、経営者としての知識も網羅的に習得できる検定です。 |
プロフェッショナルCFO資格試験 | 財務の基礎知識から経営計画、企業価値評価といった経営戦略全般を学び、企業価値向上のための財務戦略エキスパートとしての知識・スキルを習得します。 |
「確実に価値発揮できる」と思える求人企業を探す

経理担当者といっても、企業によって求められる資質・能力の範囲やレベルはさまざまです。
これまでの業務経験を生かせる可能性が高い仕事内容・ポジション・役割の求人が見つかるまで「待つ」という姿勢も必要になるでしょう。
「この企業であれば今までの経験を生かせそうだ」と思える企業を見つける必要があります。
ただし、求人に記載されている情報は断片的であることも少なくありません。
実際に企業が求めている能力・資質を見極めるには、企業HPやプレスリリース、近年の業績、採用実績なども総合的に踏まえた上で、求められる人材像の仮説を立てておくことが大切です。
入社後に活躍できる可能性の高い求人を見極めるには、事前の情報収集や企業研究が欠かせないことを理解しておきましょう。
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職務経歴書では「企業が求めるスキル・実績」、面接では「人柄」を重点的にPR

ミドル・シニア層は業務経験が豊富であることから、職務経歴書に記載できる内容が膨大な量になることもめずらしくありません。
職務経歴書には経験業務を隈なく羅列するのではなく、企業が求めていると思われるスキル・実績を集中的にアピールすることが大切です。
経験が豊富であることをアピールしようとするあまり記載する情報量が増えすぎてしまうと、かえってピントがぼやけてしまい採用担当者に響きにくくなる可能性があります。
面接では、職務経歴書に記載した経験の背景や仕事に対する思いなど、人柄が伝わるエピソードを重点的にPRしましょう。
採用担当者は職務経歴書の中でとくに注目したスキル・経験に絞って質問をしてくるはずですので、記載事項を反復するのではなく掘り下げていくイメージで臨むのがポイントです。
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40代~50代ミドル・シニア層の転職支援に強い転職エージェントを活用しよう

自分に合った求人を「待つ」スタイルで転職活動を進めるのであれば、転職サイトを定期的にチェックすることと合わせて、転職エージェントを併用することを強くおすすめします。
転職エージェントに希望条件を伝えておくことで、エージェント独自の非公開求人を紹介してもらえる可能性があるからです。
また、転職エージェントに登録するとキャリア相談に応じてもらうことができます。
これまで自分では見過ごしていた強みや、考えたことがなかったキャリアプランを客観的な視点から示してもらえることがありますので、自身のキャリアの棚卸しやキャリアプランの策定にも役立つでしょう。
ミドル・シニア層の転職支援に強い転職エージェントであれば、過去に同年代で転職した人の事例を踏まえて転職活動をサポートしてもらえるはずです。
独力のみで転職活動を進めることにこだわらず、積極的に転職エージェントを活用するほうが得策です。
4)40代~50代ミドル・シニア層の経理部への転職に、おすすめ転職エージェント
40代~50代ミドル・シニア層が経理部への転職を目指す場合、転職エージェントはどこでもよいというわけにはいきません。
転職する目的や転職活動の方向性に応じて、求める機能を備えたサービスを活用することが非常に重要です。ニーズに合った転職エージェントを活用することで、希望条件に合った求人を紹介してもらえる確率も高まります。
次に紹介する転職エージェントは、40〜50代の人材が経理部への転職を希望する場合に活用したいおすすめのサービスです。
転職エージェントごとに保有している非公開求人は重複していないことも多いので、できるだけ複数のサービスに登録し、併用していくようにしましょう。
「じっくり時間をかけて転職活動を行える」人は、リクルートダイレクトスカウト、MS-Agent、ビズリーチ、JACリクルートメント、パソナキャリア

転職を急いでおらず、じっくりと時間をかけられるようであれば、経理・管理部門を専門とするサービスやハイクラス人材向けのサービスに登録しておくことをおすすめします。
こうしたエージェントは対象とする求人が限られていることから、求人数そのものは大手のサービスと比べると少なくなりがちです。
しかし、希望条件に合う企業が見つかれば短期間で一気に採用が決まることもあるので、できる限り登録しておくほうが望ましいでしょう。
経理・管理部門特化型やハイクラス層向けの転職エージェントは、各サービスで独自に非公開求人を保有していることがほとんどのため、複数のサービスに登録しておくほうが得策です。
その上で、各担当アドバイザーのサポートを受けつつ、転職活動が長期戦となることも想定しておきましょう。
サービス名 | 特徴 |
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![]() リクルートダイレクトスカウト |
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![]() MS-Agent |
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![]() ビズリーチ |
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![]() JACリクルートメント |
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![]() パソナキャリア ハイクラス |
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![]() ランスタッド |
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![]() ロバート・ウォルターズ |
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「なるべく早めに転職したい」という場合は、doda、リクルートエージェントを

40代~50代の転職で焦りは禁物ですが、ずるずると引き延ばしてしまわず可能な限り早期に転職先を確保したいと考えている人もいることでしょう。
なるべく早く転職したいのであれば、求人数の豊富な大手転職エージェントを活用するのが理に適っています。求人の母数が多いので、40〜50代を対象とした経理担当者の求人を紹介してもらえる確率も必然的に高まるからです。
ただし、転職活動が想定よりも長引いた場合のことも想定して、キャリアの棚卸しや自身の市場価値分析など、今後の土台となる準備をしっかりと整えておくことも重要です。
担当アドバイザーに自身のこれまでの経歴や経験業務、今後の希望を伝えておき、良い求人が見つかりしだい連絡を入れてもらえるように依頼しておきましょう。
サービス名 | 特徴 |
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![]() doda |
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![]() リクルートエージェント |
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まとめ)40・50代の経理への転職は「ピンポイントの需要」を逃さない工夫を!

今回見てきたように、40代~50代ミドル・シニア層の経理経験者が転職するのは決して不可能なことではありません。
ただし、求人が常に見つかるわけではなく、希少なチャンスであるのは事実です。
いつでも選考に臨める準備を整えつつ、希望条件に当てはまる求人が見つかるまでにはある程度の期間を要するものと考えておきましょう。
ベテランの経理担当者を求める「ピンポイントの需要」を逃さないよう、複数の転職サービスを活用するなどの工夫をして、万全の準備を整えておくことが大切です。