ディレクターが転職時に自己PRで伝えるべきポイントは?
[最終更新日]2023/09/18

Webディレクターやアプリ開発ディレクターなど、いわゆるディレクションの仕事に携わってきた人にとって、転職時の自己PRを考えるのは容易なことではありません。
業務領域が幅広く、マルチタスクが基本となるディレクターにとって、「自分の強みはこれだ」と特定し切れない面があるからです。
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目次
1)採用選考で「自己PR」が重要な理由とは?
はじめに、そもそもなぜ採用選考において「自己PR」が重要であるか、という点について整理しておきます。
面接では「自己PRをお願いします」と言われることもあれば、面接のやりとりの中で自己PRを織り交ぜることもあります。
しかし、いずれの場合であっても自己PRを事前に練り上げておくことは非常に重要です。自己PRが重要な理由として、次の点が挙げられます。
採用選考で「自己PR」が重要な理由
即戦力を求める企業が増えているため

中途採用市場ではとくに、即戦力として活躍できる人材を求める傾向が顕著になっています。
つまり、入社してから「育てる」というよりは、入社後すぐに手腕を発揮し、成果を挙げていくことが求められているのです。
そのため、採用選考では「どんな実績を持った人材か」だけでなく、「具体的に何ができるのか」「どんな能力を持っているのか」といった本質的な部分が評価対象となる傾向があります。
職務経歴書に実績を記載すれば「相応の能力が備わっていることは伝わるだろう」と考えがちですが、限られた面接の時間内に伝わる情報量には限度があります。
採用担当者のポジションによっては面接の場で応募書類に初めて目を通すことも想定できるため、具体的にどのような強みがあるのか、何がアピールポイントであるのか、言語化して明確に伝える必要があるのです。
「私を採用するとどのようなメリットがあるか」を伝えるため

ディレクターのポジションは開発や制作現場において花形であることから、とくに人気企業では多数の応募者が殺到することが考えられます。
優れた実績を持つディレクター経験者が複数名応募していることもあり得るため、他の応募者ではなく「私」を採用することでどのようなメリットがあるのか、はっきりと伝えることが重要になります。
実際に、面接の場で「あなたを採用することで当社にどういったメリットがあるのでしょうか?」と聞かれるケースもあります。
しかし、たとえ直接的な質問がない場合であっても、「私を採用するとこうしたメリットがある」と伝えるつもりで面接に臨む必要があるでしょう。
採用するメリットを伝えようとする姿勢は、入社意思が強く、高い意欲を持って応募していると伝えることにもつながるはずです。
経歴に一貫した「ストーリー」を持たせるため

職務経歴書などの応募書類には、これまでに経験してきた業務内容や実績、保有資格など自身をアピールするための情報が記載されています。
採用担当者はもちろんこれらの情報に1つ1つ目を通すはずですが、実際には「この応募者を採用すべきかどうか」を判断するための「決定打」を端的に知りたいと感じているケースが少なくありません。
「この人を採用したい」「ぜひこの人と働きたい」と思ってもらうには、経歴を断片的な情報として伝えるだけでは不十分です。
どのような思いで仕事に取り組み、さまざまな困難を乗り越えて成果を挙げてきたか、といったストーリーを伝える必要があります。
自己PRは自由度が高く、自分の言葉でストーリーを伝えられるチャンスといえます。経歴に一貫したストーリーを持たせる上で、自己PRは大きな役割を果たすのです。
2)ディレクターがアピールするべき3つのスキル
自己PRが採用選考において大きな役割を果たすことは前述の通りです。
では、ディレクターにとってアピールポイントとなるスキルにはどういったものがあるのでしょうか。
担当してきた案件によって業務内容は異なるはずですが、共通する部分も多いスキルとして次の3点が挙げられます。自己PRを構成する際には、これらのポイントを軸に考えていくといいでしょう。
ディレクターがアピールするべき3つのスキル
複数の案件を適切に進行する進捗管理力

ディレクターは単一の案件に集中できることばかりではありません。
むしろ、複数の案件が同時並行で進み、マルチタスクをこなさなくてはならない場面も多いはずです。このとき必須となるのが、案件ごとの進捗を適切に管理する「進捗管理力」です。
進捗管理力を発揮するには、綿密な計画を準備する能力と、計画と実態とのずれを適時軌道修正していく対応能力の両面が求められます。
この進捗能力が優れているディレクターは、多くの案件を抱えてもパンクしにくく、こなせる仕事量が多い傾向があります。つまり、応募先企業にとって「採用するメリット」に直結しやすいのです。
また、進捗管理力が優れている人材は、目標を着実に達成していくプロセスを理解している可能性が高いことから、リーダーシップの面でも優れているケースが多く見られます。
ディレクターは開発現場において管理職に相当するポジションですので、優れたリーダーシップを発揮できることは採用の決定打となることが想定できるのです。
新たな情報・トレンドをキャッチする情報収集力・学習意欲

ディレクターとして転職したい人の多くが、これまでの実績をアピールしたいと考えています。
しかし、実績はあくまでも過去のものであり、転職先の環境下で同等以上のパフォーマンスを発揮できるという保証はありません。
つまり、「過去の成果は証明できても、未来の成果は保証されていない」のが実情なのです。
将来にわたって優れたパフォーマンスを発揮することへの期待値を高めるには、新たな情報やトレンドをキャッチし続けられる情報収集力や学習意欲をアピールする必要があります。
たとえば、Webディレクターであれば業界のトレンドはめまぐるしく変化していますので、常に新たな情報をキャッチし、吸収してきた事実は学修意欲の高い人材としての評価につながる可能性があります。
未来に向けた期待値を高める上で、情報収集力や学習意欲をアピールすることは欠かせない要素といえるでしょう。
多方面の人材と関係性を築くコミュニケーション能力

ディレクターとしてのスキルレベルを伝えるにあたって、テクニカルな面に重きを置きたくなるのは致し方ない面があります。
ただし、採用担当者が見ているのはテクニカルな要素だけではないことを十分に理解しておく必要があるでしょう。
ディレクターはクライアントとの折衝から開発・制作現場への展開まで、幅広い方面の方々とコミュニケーションを図る必要のあるポジションです。
相手が置かれた状況を想像し、適切な言葉をかけることができたり、問題になりそうなことを先回りしてフォローしたりといった能力も求められます。
こうした能力を発揮する上で重要となるのが対人コミュニケーション能力です。頼られる・信頼されるディレクターとなるには、日頃から適切にコミュニケーションを図り、関係性を築いておく必要があるからです。
コミュニケーション能力は汎用性が高いため、職場環境が変わっても適応できると判断してもらう上で重要なポイントとなることも考えられるでしょう。
3)効果的な自己PRのカギを握る「キャリアの棚卸し」の進め方
ここからは、ディレクターが効果的な自己PRをするために必須となる「キャリアの棚卸し」の進め方について見ていきます。
ディレクター歴が長く、多彩な仕事を手掛けてきた人ほど、アピールポイントを絞るためにはキャリアの棚卸しをしっかりと行っておく必要があるでしょう。
次に挙げるキャリアの棚卸しの手順は、ディレクターとして活躍してきた分野が異なっても汎用的に活用しやすい方法です。ぜひ転職活動の準備を進める際の参考にしてください。
「キャリアの棚卸し」の進め方
ディレクターの幅広い業務領域を整理する

ディレクター業務の大きな特徴の1つに、業務範囲が非常に幅広く一言で表現するのが困難な点が挙げられます。
そのため、これまで担当してきた業務領域を項目ごとに書き出し、整理しておくことが大切です。
一例として、Webディレクター業務の一部を挙げてみます。
Webディレクターの業務領域の例
- クライアントへのヒアリング、課題抽出
- 企画策定
- 見積書作成
- サイト設計
- 要件定義書、制作指示書作成
- 制作スケジュール策定
- デザイナー、コーダー、ライターなどへの発注
- 進行管理
- 委託先から納品された成果物の品質チェック
- アクセス検証、最適化に向けた施策
- Web業界の動向リサーチ
このように、ディレクターの業務は多岐にわたっていることから、そもそも「自分は日頃、どんな仕事をしているのか」を改めて把握しておくプロセスが欠かせません。
「ディレクター業務と伝えれば、おおよその仕事内容は理解してもらえるはずだ」と安易に捉えず、きちんと業務内容を整理しておきましょう。
担当業務の中でアピールポイントを見つける

整理して書き出した業務領域のうち、自分がとくに深く関わってきた業務や、力を入れてきた業務をピックアップしていきます。
たとえば、スムーズな制作進行のために要件定義や指示書の精度にこだわってきた人や、制作実務が始まって以降の進行管理を得意とする人など、各々でアピールポイントは異なるはずです。
自分にとって強みといえる業務はどれにあたるのか、アピールポイントを見つけておきましょう。
また、アピールポイントを見つける際には、応募を想定している企業やポジションで必要なスキルを優先することが大切です。
応募先企業がプロデューサー寄りの人材を求めているようなら、クライアントとの折衝に関するスキルをアピールしたほうが効果的でしょう。
反対に、現場でのディレクション実務が重視されているようであれば、進行管理や納品前のチェックといった制作実務面をアピールしたほうが得策です。
求められているスキルと自身の強みに共通点を見いだし、ポイントを絞ってアピールすることが重要です。
より汎用的なスキルとしてアピール可能な切り口を見いだす

キャリアの棚卸しからアピールポイントを決定していくプロセスで陥りやすいのが、特定の業務経験とアピールポイントを一対一のセットにして結びつけてしまうケースです。
たとえば、進行管理がディレクターにとって重要な役割であるのは明白ですが、「適切に進行管理ができることが、私の強みです」とアピールしても、ディレクターとして「できていて当然のこと」と捉えられてしまう恐れがあります。
アピールしたいポイントが決まったら、特定の業務に限った強みとして伝えるのではなく、より汎用的なスキルとしてアピールできるように深掘りしていきましょう。
進行管理が適切で、いつも無理なく納品できていたようなら、進捗管理力そのものが優れている可能性も高いはずです。
進捗管理力が高い人材であれば、プロジェクト全体の管理や制作現場の統括といったポジションにも登用可能な人材として評価してもらえる可能性があります。
このように、1つの経験業務に対して1つのアピールポイントを用意するという発想から、汎用的なスキルとしてアピール可能な切り口を探す発想へと転換することで、より伝わりやすく、高く評価されやすい自己PRが可能になるのです。
ポータブルスキルについて
業種や職種が変わっても通用する汎用的なスキルのことを、「ポータブルスキル」と呼びます。
スケジュールを正確に立てる「計画力」や業務のPDCAを回していく「推進力」、「対人コミュニケーション」などがこれにあたります。

ポータブルスキルは、大きく「(個人の)業務遂行」に関わるスキルと、「コミュニケーション」に関わるスキルに分けることができます。
ポータブルスキルの例
区分 | ポータブルスキル | 説明 |
---|---|---|
業務遂行分野 | 現状把握・情報収集力 | 課題や目標設定の前に行う現状の把握や情報分析などを適切に行う能力 |
課題設定力 | 今注力すべき課題と、そのための仕事の進め方を見定める能力 | |
計画力・調整力 | 目標達成に向けての適切なスケジュール立て、および関係者や調整事項を整理する能力 | |
遂行力 | 課題・目標に向けて遂行する能力 | |
対応力・柔軟性 | 先のことを予測したり、イレギュラーな事態にも臨機応変に対応する能力 | |
対人コミュニケーション分野 | 社内対応力 | 上司や他部署の人たちの指示を適切に処理したり、必要に応じて協力を仰いだりと、適切なコミュニケーションを用いて協働していく能力 |
社外対応力 | 顧客・取引先とのコミュニケーションから、相手の求めていることをいち早く察知し行動し、信頼関係性を高めていく能力 | |
部下育成・マネジメント力 | 部下を適切に指導・育成・評価し、成長を促していく能力 |
ポータブルスキルを磨いていくことによって、幅広い業務で活躍できるだけでなく、自身の求めるキャリアを切り拓きやすくなります。
ポイントは、現在の業務または過去に携わった業務において「どのポータブルスキルが関わっていたか」を意識しておくことです。
ポータブルスキルは無意識的に蓄積・発揮されることが多いですが、意識することによってスキルアップの速度を高めていくことができます。
また、人は苦手分野に対してこちらも無意識的に「避けて通ろう」としてしまうことが多いです。
上記のポータブルスキル一覧を見て、もしあまり経験を積んでいないと感じられる項目があったら、意識して積極的に取り組んでおくと良いでしょう。
4)ディレクターの自己PRで注意しておきたい点
ディレクターが自己PRを考える際に「やっておくべきこと」について解説してきました。
一方で、自己PRで「やるべきではないこと」も存在します。ディレクターが自己PRでとくに注意しておくべき点について、ポイントを確認しておきましょう。
ディレクターの自己PRで注意しておきたい点
トラブル対応などの苦労話に終始しないこと

ディレクターは業務範囲が広く、多忙になりやすいことから、これまでの経験を振り返っていくと「大変な思いをした案件」や「苦労したトラブル対応」といったように、苦労話が次々と思い浮かんでしまうことがあります。
たしかに苦労した経験から得た教訓も多いはずですので、一見すると苦労話はディレクター経験の豊富さを示すエピソードのようにも思えます。
しかし、応募先企業の採用担当者が知りたいのは苦労話ではなく、「うちに入社したら何ができる人材なのか」という点であることを忘れるべきではありません。
自己PRは、最終的に「……といった強みを生かして、貴社で貢献することができます」というシンプルな結論を目指すべきなのです。
苦労話に終始してしまうと、ディレクター業務に多大な負担を感じているように受け取られてしまい、ディレクターとしての適性そのものを疑われてしまうこともないとは言い切れません。
自己PRを作成したら、必ず読み返して「苦労話ばかりに聞こえないだろうか?」と客観的な視点でチェックしておきましょう。
実績の羅列にならないようにすること

ディレクターとしての力量やスキルレベルを伝えようとするあまり、過去の実績を羅列した自己PRをする人がいます。
「〇〇で成果を出しました」「〇〇を達成しました」といった実績は、ディレクターとしての手腕を示す客観的な事実として伝えたほうがよい場合もあるのはたしかです。
しかし、企業にとって知りたいのは「その能力は当社でも発揮できるのか」「当社の現場でも通用するのか」という点でしょう。
むしろ、「実績があるのだから、転職先でも問題なく通用する」と軽く考えているように映ってしまうと、かえってマイナスポイントにもなりかねません。
自己PRは自身の強みを伝え、入社後の活躍に期待を寄せてもらうために行うものです。過去の実績はその一助となることもありますが、実績を伝えること自体が目的化しないよう留意する必要があるでしょう。
今後のビジョンやキャリアプランを意識すること

転職活動を始めようとするとき、どうしても「希望条件に合った企業が見つかるだろうか?」「条件の良い企業に採用してもらえるだろうか?」といった目の前のことに注目しがちです。
直近のことをよく考えておくのも大切ですが、先々への見通しを立てた上で転職先を選ぶ視点を持つことも非常に重要です。
面接では、入社してやってみたいことを聞かれる場合があります。
入社した直後に携わりたい業務を答える人もいるはずですが、同時に5年・10年という中長期的なスパンでどのようなキャリアを歩んでいきたいのか、展望を持っておくようにしましょう。
たとえば、「将来的にこんなディレクターを目指したい」「ディレクターとしての経験を生かして、プランナーなどより俯瞰的な立場で働いてみたい」といった見通しを持っている人材は、入社後も自分で成長機会を見つけ、スキルをさらに伸ばしていく可能性が高いでしょう。
直近のことを意識しがちになるのはやむを得ない面もありますが、できるだけ先々のビジョンやキャリアプランにも目を向けておくことが大切です。
キャリアプランとキャリビジョンについて
キャリアプランとは、あなたが将来に望む仕事や働き方を実現するためのプランニング(行動計画)のことをいいます。
その際に、キャリアプランとセットで使われる言葉に「キャリアビジョン」があります。 キャリアビジョンは、あなたが未来に「こういう働き方をしたい」というイメージのことです。
つまり、まず「目標」としてキャリアビジョンを描き、それを実現するためにキャリアプランを立てるということです。
キャリアビジョンとキャリアプランは、以下のように表に落とし込むことによって考えやイメージを整理しやすくなります。
キャリアビジョン、キャリアプランの作成表

キャリアビジョン、キャリアプランの作成表(記入例)
キャリアビジョン (仕事で実現したいこと) |
キャリアプラン (そのためにやるべきこと) |
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1年後 |
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5年後 |
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10年後 |
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「キャリアビジョンのイメージが持てない」という人は、さきに「キャリアの棚卸し」を行っておくことをおすすめします。
以下の記事にキャリアの棚卸しの進め方を紹介しています。興味のある方はあわせてご覧ください。
まとめ)ディレクターの自己PRは「最終的にはシンプル」を目指そう

ディレクターは業務範囲が多岐にわたることから、自己PRで伝えるべき内容も多くなりやすい傾向があります。
ただ、限られた応募書類上や面接時間内で伝えられる情報量には限度があります。いかにアピールポイントを絞り、採用担当者に響く自己PRにするかがカギを握るでしょう。
アピールポイントを絞ることで、自身の強みが十分に伝わらない恐れがあるのでは?と感じるかもしれません。
しかし、今回解説してきたようにキャリアの棚卸しをじっくりと行うことで言葉に重みが生まれ、いくつもアピールポイントを伝えるよりも印象に残る可能性が高いのです。
ディレクターの自己PRは、時間をかけて入念に準備をしつつも「最終的にはシンプル」を目指し、優先度の高いアピールポイントを確実に伝えることを意識しましょう。